上場会社の監査法人の交代、会計監査の実務などを解説しています。

私どもが考える、公認会計士による監査業務上での課題

はじめに

日本の公認会計士による財務諸表監査の必要性は、端的には、

  • 政府の方針に基づき、日本の証券市場に(外国の機関投資家からの)資金を引っ張ってくるために、「証券市場の信頼性を維持・確保・高める」ため
  • 諸外国の先進国で、会計士による財務諸表監査制度がある中で、「日本も対外的に経済大国の体裁を保つ」ため

ということでしょう。つまり、理論的に必要でもなく、また積極的な価値が認められているわけでもないのです。

したがって、オリンパス事件、東芝事件などが生じると、上の2つの・にダイレクトに抵触しますため、金融庁や日本公認会計士協会は、全力でその対応に当たります。

他の課題は後回しになります。

不幸にも、会計不正事件は断続的に発生してきているため、「前回の不祥事に対応し終わり、さてそれでは、従来からの課題に取り組もうとすると、また次の新しい課題に直面し、その対応に、、、、、」の繰り返しです。

以下では、このような、従来から積み残された課題を指摘します。

課題:特別目的の監査

「ん?特別目的の監査って何だ?」と思われる方は少なくないかもしれません。

外国では、法定ではない、任意での会計士による監査サービスのニーズ(=要は、価値があるので、相応の報酬と時間をかけるという認識)があり、小規模な組織体に対する監査の枠組みがあります。それが「特別目的の監査」です。

日本では、そのような監査というニーズは、今も、ほとんど、ありません。
もちろんゼロではなく、本当に若干だけあります。その場合、この監査に関与する利害関係者はごく少数のため、従来の会計士監査サービスを、若干、運用で調整すれば足りました。

しかし、平成26年前後に、クラリティプロジェクトという、要は、会計ルールが国際的調和化を進めているので、監査ルールも国際的調和を図りましょうという作業を進め、外国の監査ルールを、ほとんど丸飲みで導入しました(現在の、監査基準委員会報告書)。
その中に、この「特別目的の監査」が入っていました。基本的には会計士の職域の拡大になりますので、積極的な反対まではなく、しれっと導入されました。

これが導入された結果、、、、監査を導入するための前提が設けられてしまいました。要は、適用する会計基準が必要がないと、監査手続を十分実施したとしても、監査報告書が出せない、となってしまいました。

「そんなの、決算書を作成する以上、当たり前じゃないか?」と思われるかもしれません。

例えば、中小企業の決算書は、実態は、税務会計です。これに会計基準はありません。そうすると、例えば、金融機関から当該中小企業の簡易な監査をしてくれと依頼されても、監査報告書を渡すことができないことになります。

さすがに、以上のケースや容易に浮かぶケースは、解説記事等で普及に努めていますが、いかにもとってつけた感がぬぐえません。

仮に、特別目的の監査を導入してなければ、保証の水準をやや下げるような調整で、監査報告書を出していた実務がありました。

日本のような、本音では会計士の監査サービスのニーズがない国で、その導入に際しハードルを上げてしまっただけのものです。

また、この「特別目的の監査」では、通常の金商法監査等のような「適正意見」ではなく、「準拠性意見」という意見を表明しますが、これが一般人にとっては「え?お金を払って、内容もOKで、適正意見じゃないの?」という疑心(クレーム)を生じています。

課題:金融商品取引法監査における、ITに関する監査の品質

これについては、論文を出稿しましたので、ご覧ください。

LEC会計大学院紀要 第17号 「AI 監査の時代の前に考える「IT に関する監査」の実務上の課題 ― 金融商品取引法監査における、深度ある手続の実施の観点から ― 嶋矢 剛」

 

課題:地方公共団体に対する包括外部監査制度で、毎年、監査を実施している弊害

端的にいうと、以下の問題があります。

  • 包括外部監査に関与する、責任者及び補助者の公認会計士は、特定の少数であり、それが、結果的に、輪番のような形で、毎年、場所と立場を変えて、登場している。
  • テーマも、せいぜい10個程度であり、それが一巡すると、また2巡、3巡している。
    → それでも報告書の体裁として100ページ前後必要であるため、結果、重箱の隅を楊枝でほじくるような指摘が増えている。
  • コストは、政令指定都市でも1千万円超(!)であり、財政赤字を抱えている地方公共団体にあっては、その効果を真剣に検討する必要がある。
    (ちなみに、補助者へ支払う報酬に引き直すと、金商法監査の場合で、ざっくり言うと、東京の監査法人よりは安く、大阪の監査法人よりは高い、という水準です)
  • 急がないため、監査期間が長い。だいたい半年。であれば、正直、責任者が一人でやっても足りる。
    →では、なぜ、補助者を含めチーム体制でやっているのか?
    →理由はというと、、、、仲間への仕事のあっせんである(補助者の中には、それまで包括外部監査を未経験、という会計士が若干名、紛れ込んでいる)。特に、次年度に、別の包括外部監査の責任者に内定している人を取り込んでいることが散見される。

こんな事例もあります。

「大規模不正会計事件の形式的な責任取りで、地方事務所へ転籍した公認会計士が、それまでやったこともない包括外部監査の責任者に就任し、監査業務はその大手監査法人の公会計部門のスタッフを派遣してもらって遂行し、ほとぼりが冷めたところで、本部へ戻った」

というものです。
結果的に、財源が税金によって賄われている包括外部監査が、その問題のある会計士(監査法人)の、格好の口減らしに利用されたことになります。

→ 平成30年度の改正で、この包括外部監査の(毎年の)継続が、従来は毎年であったのが任意へと変更されました。今後は、主体的に包括外部監査を活用されることを期待します。

課題:いわゆる私学助成金に係る学校法人監査は、本来、文科省がすべき仕事を、交付する補助金の一部を使って、外部にさせている

いわゆる私学助成金に係る学校法人監査は、文科省(高校以下は各都道府県)へ提出する計算書類を、公認会計士が監査するものです。

「学校監査はもう50余年も実績のある、法定監査の分野じゃないの?」と思われるかもしれません。

たとえば、全国の地方公共団体(都道府県、市町村)でも、各種の補助金を出しています。その補助金の交付団体へは、原則として、計算書類(財務諸表)の提出を義務付けています。
そしてその内容の適否は、地方公共団体の職員がチェックしています。
このように、全国の地方公共団体では、提出された計算書類を自らチェックしています。

なのに、なぜ、文科省では、提出された計算書類を自らチェックせず、公認会計士にさせているのでしょうか?

理由は単純で、

  • 文科省で、そのような仕事をしなくて済む(予算が浮く)
  • 公認会計士がチェックするので、間違いを見逃すリスクが少ない
  • 学校法人会計は、いわゆる基本金の会計など、一部にフツーの経理担当者が理解できない領域があり、それが学校法人側からも公認会計士に相談したい(監査を是とする)モチベーションを生んでいます。もちろん、公認会計士にとっては(特に個人の公認会計士にとっては)貴重な割のいいお仕事です。

ので、文科省にとって都合が良く、かつ文句を言う人がいない構造が出来上がりました。(ナカナカ、うまいやり方です。)

しかし、このことは、「税金を財源とする補助金を、交付先の学校法人から、一部、文科省が搾取している」ことになります。
経済効果的には、キックバックと同じです。

学校法人の知人に聞いてみると、学校法人側は、いわば、国からもらった補助金の中から、公認会計士への監査報酬を支払っている感覚です。サラリーマンの源泉所得税と同じで、懐から支払っている感覚はないそうです。

それでも、支払の窓口である文科省の政策のため、敢えて逆らいません。

監査の専門的にいうと、補助金を交付するのであるから、「補助金の使われ方」をチェックするべきですが、現在の学校法人の監査では、計算書類が正しく作成されていることをチェックしていますから、チェック行為がフィットしていません。

学校法人の最近のトピックに、「理事長の不正」があります。これは、文科省の職員等が立入検査等で対応すべきです。

別のトピックとしては、「新しい、後発の私学の中、倒産し始めているところが生じている」ますが、これは計算書類ではなく、業務が問題なので、いくら公認会計士が監査で計算書類を見ても意義がありません。

以上の2つ以外は、むしろ民間よりも資金が潤沢で、倒産するリスクは僅少である学校法人に、令和の今、従来の構図のままの法定監査を続けていてよいものでしょうか?

会社法監査

会社法監査の前身の、商法特例法に基づく監査は、昭和49年に、当時、未上場ではあるが規模の大きい会社の粉飾→倒産が、社会問題化し、その対策として導入されたものです。

決算書の公開が義務ではない監査です。また、これを受けない場合の過料(罰金)は、、、100万円です(会社法 976条)

実務上、マズイのは、グレシャムの法則が幅を利かせていることです。

グレシャムの法則とは、古い言い回しでは、「悪貨が良貨を駆逐する」ということで、要は、安売り合戦になるということです。

実際、周りを見聞きするに、「監査報酬300万円でいいです」といって受嘱し、ろくすっぽ監査手続をせずに、しれっと監査報告書をあげる、ということが散見されます。

実際、ある都市銀行の支店の中では、このような会社法監査だけ受けている会社から、敢えて、監査報告書は求めないところもあるようです。

JICPA品質管理レビューの担当官の品質その他

こちらをご覧ください>> JICPA品質管理レビュー/金融庁検査 への対応

 

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