いわゆる会社法上、会計監査人の選任等に関する決定権は、実質的には経営幹部が決定し、形式的には経営者が決定していました。
ところが、会社法の改正により、当該決定権限が監査役等にスライドすることになりました。
結果的に、会計監査人の選任に関して、事後に監査法人の業務や監査法人自体に瑕疵が生じた場合、監査役等が直接的な責任を負うことになります。
以下、経営財務(No.3191号)からの抜粋です。
「会社法の一部を改正する法律」(平成26年6月成立,27年5月1日施行予定)により,会計監査人の選任等に関する決定権が監査役等(監査役または監査役会)に付与された。すなわち,監査役等設置会社では,株主総会に提出する会計監査人の選任および解任並びに会計監査人を再任しないことに関する議案の内容は,監査役等が決定する( 会社法344条 )。
改正の背景には,“インセンティブのねじれ”がある。従来の制度では,監査を受ける立場にある経営者(取締役会)が,会計監査人の選任等と報酬の決定権を有していた。つまり,会計監査人は,経営者に選任され,報酬を貰って監査を行う。このねじれの構造が,「会計監査人の独立性に重要な影響を与える可能性があり,財務諸表の信頼性を毀損するおそれがある」と懸念されていた。
(中略)
なお,会計監査人の報酬については,従来通り同意権のみであり,監査役等に決定権は付与されていない。
今後は、監査役等も、会計監査人を選ぶ際に、監査業務の質を重視する傾向が強まることが予想されます。
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