解説
処分された監査法人のせいで、風評リスク???
冒頭でショッキングなタイトルの画像をご覧になって、ビックリさせてしまったとしたら、申し訳ありません。
しかし、、、最近、立て続けに起きている、金融庁や日本公認会計士協会による監査法人への処分内容を見ていると、そのような心配をせずにはおられません。
監査法人に対する処分内容の傾向が、特に平成26年度から、明らかに変わってきていると感じます。
従来の処分の内容は、企業の粉飾や不正を、監査が未熟で発見できなかったという、個別の業務での、監査スキルの未熟さを指摘するものが大半でした。
しかし、最近の処分の内容には、「監査法人が、組織的に営業に偏っている」「監査法人の審査体制に欠陥がある」という、その監査法人全体の品質管理の欠陥を指摘しているものが増えております。つまり、そちらにシフトしていると言えます。
これはどのようなメッセージなのでしょうか? 従来の処分が「改善指導」だとしますと、今の処分は、「退場’手前’勧告」といったところでしょうか?
しかし、これを見た全員が、’手前’と理解してくれるとは限りません。。。そのような問題のある監査法人は監査をキチンとしていない → その監査法人の監査クライアントの決算数字や開示も、いい加減な数字や開示なのではないか?」という誤解が伝播してしまっている虞があります。
もし、そのようなことがあったとしたら、、、もしかしたら、株価下落などの損失を与えてしまっているとしたら、、、そう捉えられたとしたら、、、株主からクレームが来るかもしれません。
「その監査法人に依頼していたせいで、当社の決算・開示が いい加減で、不正もあるかもしれない」と、勝手に思われてしまうリスクです。
貴社の監査法人と日頃接していて、、、「ウチの監査法人さん、処分されるようなことは、ないだろうか。。。」と思ったときに、、、、思い当たるフシがあるようですと、要注意です。
監査法人が処分されるキッカケ
監査法人が処分されるのは、金融庁の検査を受けたり、日本公認会計士による品質管理レビューを受けてです。
では、そのような検査やレビューをうけるキッカケはというと、以下のようなものがあります。
- 企業自体が粉飾や倒産をして、新聞報道で取り上げられる (←金融庁による検査)
- 同じ監査法人に対して原則として3年に一度、実施されるレビュー (←日本公認会計士協会)
- 取引先、社内の従業員等による、金融庁への通牒(リーク)
メインバンクから、自社の監査法人が処分されたことを知る混乱
監査法人への処分は、金融庁による処分の結果や、日本公認会計士による品質管理レビューの結果が、各々のウェブサイトにアップされたタイミングで発覚します。
そして、、会社が自社の監査法人が処分を受けたことを知るのは、、、、メインバンクから会社へ問い合わせが来ます。
銀行は、自ら毎日金融庁のhpをチェックしているのではなくて、そのようなチェックをしている業者と契約していて、取引先企業に関することがアップされると、その業者から情報を得ているようです。
金融庁の検査を受けたいた場合、そのことを監査法人は、監査クライアントへは、基本、話していませんから、監査クライアントとしては、ビックリ仰天です!さっそく監査法人の責任者へ問い合わせます。
毎日自ら金融庁等のウェブサイトをチェックする訳ではない監査法人は、いわば、監査クライアントから、処分の事実を教えてもらう、という後手後手の対応になりますし、監査クライアント側はガッカリしてしまうようです。
今の監査法人と契約した当時の理由を、株主へ説明できますか?
もし、自社の監査法人が処分され公表されて、その理由が、監査の品質管理の欠陥だとすると、「そのような監査法人と、そもそも、どのような理由で契約をしたのか?当時、きちんと検討したのか?」という点が、蒸し返されるかもしれません。そのとき、対外的に説明できますでしょうか?
当時の経緯を調べてみて、もしも、、、、
- 創業者が、今の監査法人の代表者と、地元の高校の同級生だったので、同郷のよしみで、交代した、、、
- 銀行の支店長の個人的紹介だったので、断りにくくて、交代した、、、
- 以前は、大手監査法人だったのだが、ダンピング営業で来た監査法人へ、価格だけで判断して、交代した、、、
といった理由だとしたら、、、「当時の変更は妥当だった」と、今の株主へも説明できますか?
「当時、何かしらの〇〇誘導があったのではないか?」と詰問されたら、抗弁できますでしょうか?
「いや当時のことは、会社の今の経営執行部は関知していなかったので、、、」で済むとは限りません。いわんや、今の経営執行部のときになされているとしたら、、、?
今の中小監査法人が処分されたら、当社も被害者だと今の株主へ説明できますか?
これまで中小規模の監査法人と監査契約を継続してきたのは、、、「いわゆる大手監査法人よりも、ネームバリューはない」デメリットはあるけれども、監査報酬はリーズナブルだし、あまりうるさいことは言わないだろう(?)というメリット(?)を優先されたからかもしれません。
某中小監査法人が関与する上場会社経理担当者である知人に聞くと、
- 会計士へは、教えてあげることはあっても、教えてもらうことはないなあ~
- 間違ったことを言ったあと、それを引っ込めないから、決算に時間がかかって大変だよ!
- 実は、以前、デリバティブ取引の開示を漏らしちゃったんだけど、監査法人がいまさら開示するなって言うから、そのまま来ているんだよね~
などという話がゴロゴロ出てきて、ビックリしてしまいます。 貴社の経理担当者にも本当のところを聞いてみたら、、、もしかしたら、似た話が、あるかもしれません。
そんなスキルの監査法人に、、対外的に「きちんと監査をしてもらってきた」と説明できますか?
そのような監査法人こそ、当然、処分を受けるリスクが高いと思いますが、その監査法人に処分が起きたとしても、その監査法人と、契約を更新してきていることが正当であったのだと、株主へ説明できますか?
監査法人の交代に踏み出す前にチラつく「2つの懸念」
以上を確認してみて、どうも、自社の監査法人にはリスクがあるかもしれないとな、となった場合、、、さて、どのような対応をとればよいでしょうか?
以上のリスクを抜本的に解消する方法は、、、監査法人を変更する準備を開始することです。 実際、監査法人の変更の事例は、毎年、一定数、あります。 しかし、だからといって、担当者としては、以下の2つの懸念があるため、慎重になります。
懸念① 監査法人を変更すること自体が、風評リスクを生むかもしれない。。。
監査法人は、実は、結構変わっています。 監査法人を変更することによって生じうるリスク、は杞憂なのかもしれません。この点を、以下で分析しておりますので、ご覧下さい。 → 監査法人を交代しない、できない・・・と誤解していませんか?
懸念② 今よりも、悪い監査チームが担当するかもしれない。。。
次の監査法人を吟味に吟味を重ねて選んだとしても、従来の監査法人より絶対に良いという100%の保証は、確かにありません。。。しかし、今の監査チームがダメでなのであれば、アクションを起こさない限りと、永遠にダメなまま状況は変わらないことも、確かです。
監査法人を変更することで期待されるメリットもあります。
監査法人を変更することは、不安要素ばかりではありません。以下のようなメリットも期待されます。
- 対外的に - 監査法人を変更したことが、市場へのメッセージとなる可能性があります。
例えば、変更後の監査法人の特徴が、監査の品質をPRしている監査法人の場合には、会社がそのような姿勢を重視しているという、市場へのメッセージになる可能性があります。
- 対内的に - 経理部の業務がマンネリ化している場合、経理部に刺激を与えることができる可能性があります。
監査法人の交代を機に、経理部の業務分担の見直しや、企画的な仕事にシフトするキッカケにすることが可能です。
それでも監査法人を変更することに不安がある方へ
もう一度、こちらをご覧ください。。 → 監査法人を交代しない、できない・・・と誤解していませんか?
監査法人を、どこに変更するか?候補を絞り込むためには?
そして、監査法人を変更しようと動き出そうとします。
その際に、まず、着手すべきことは、、、後任の監査法人を選定することです。
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