ここからは、監査法人が交代する際に、実務上作成される書類を、ご説明します。
なお、イメージしやすいように、一般形で記載しておりますが、前任監査法人の名称や監査クライアントの名称等によっては、若干、字句は変わりますこと、ご承知願います。
まず、記事 監査法人 交代の場合の一般的な流れ ①ご説明 の、
↓
③ 新監査法人から現監査法人へ、
「監査調書閲覧等、監査業務の引継に関するお願い」を送付。
の際に、「守秘義務に関する確認書」 を作成します。
新監査人は、監査人に就任するに先立ち、当該監査対象の会社が監査を受けられる体制にあるか等を評価する必要があります。
他方、前任監査人には従来、現在、そして将来も、守秘義務を守ることが要請されています。
そこで、後任監査人の引継ぎ作業に限定して、その守秘義務を解除するよう、監査クライアントが前任監査人に指示する必要が生じるため、以下のような書面が必要になります。
まず、1枚目ですが、いわゆるヘッダーです。
監査クライアントの意思表示ですから、差出人は、監査クライアントになります。
例外的に守秘義務を外すよう、依頼を受ける前任監査人ですが、併せて、それを承知しておくべき後任監査人も宛先に追記されます。
つまり、宛先は、前任監査人と後任監査人が並記されますが、上段は、主たる宛先である前任監査人が記載されます。
次に、2枚目ですが、後任監査人が必要と認めて記載する内容です。
ですので、差出人は、本来、後任監査人(だけ)なのですが、それを守秘義務を解除することを同意する意思表示として、併せて、監査クライアントの代表者も宛先に追記されます。
一枚目
平成**年6月22日
****監査法人
代 表 社員 ** ** 殿
公認会計士京浜晃和監査法人
代表社員 嶋矢 剛 殿
公認会計士****株式会社
代表取締役社長 ** ** ㊞
拝啓 時下ますますご清祥のこととお慶び申し上げます。
さて、当社の監査人の交代に際して、京浜晃和監査法人を****監査法人に代わる監査人予定者として指定したことを通知いたします。
なお、監査契約書(又は監査約款)により、監査業務の引継に必要とされる情報に関して、****監査法人の守秘義務は解除されております。
敬 具
二枚目
守秘義務に関する確認書
****株式会社(以下、「甲」という。)と京浜晃和監査法人(以下、「乙」という。)は、監査契約の締結前に実施する監査業務の引継に関し、次のとおり守秘義務に関し確認する。
1. 本確認書でいう情報とは、甲及び****監査法人(以下、「丙」という。)が乙に開示する情報のすべてであり、文書又は電子的媒体により開示若しくは提供するもののほか、口頭による説明を含むものとする。
2. 乙は、甲及び丙から開示を受けた情報について、厳に機密を保持し、これを甲との監査契約の締結の可否を判断する目的及び円滑な監査業務の引継に役立てる目的のみに使用するものとする。
ただし、法令や日本公認会計士協会の会則等により開示が要求された場合及び以下の情報を除く。
- 甲又は丙から開示された時点で、既に公知となっていたもの
- 甲又は丙から開示された後で、乙の責に帰すべき事由によらず公知となったもの
- 甲又は丙から開示された時点で、既に乙が保有していたもの
- 正当な権限を有する第三者から開示されたもの
3. 本確認書に基づく守秘義務は、監査契約を締結した場合には監査契約に基づく守秘義務として継続し、一方、監査契約を締結しなかった場合においても、将来にわたり存続するものとする。
4. 乙は、本確認書に基づく守秘義務の履行を怠ったときは、甲に対しその損害を賠償するものとする。
平成**年6月15日
甲 ****株式会社
代表取締役社長 ** ** ㊞
乙 京浜晃和監査法人
代表社員 嶋矢 剛 ㊞
公認会計士
続いて、② 監査調書閲覧等、監査業務の引継に関するお願い について説明いたします。
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