上場会社の監査法人の交代、会計監査の実務などを解説しています。

実務上のグレーゾーン① サンプル数

業務プロセスの、統制テストでは、統制の頻度に応じたサンプル数を集めます。具体的には、以下の2つが基礎になっています;

  • 母集団の数の、10%相当数
  • ただし、母集団が250件を超える場合には、統計理論の考え方を流用し、25件。

これらを統制の頻度ごとにあてはめると右端の件数になります。

  1. その都度(=日に数回かもしれないし、1回もない日もあるかもしれない場合を含む) → 1年に250件以上 → 25件
  2. 日に1度(=日次) → 25件。ただし営業日が年200日である場合、20件にする会社もアリ
  3. 週に1度(=週次) → 営業日は50週弱✕10% ≒ 5件
  4. 月に1度(=月次) → 12か月✕10% ≒ 1.2件 → 切り上げて、2件
  5. 四半期に1度(=四半期) → 4回✕10% → 0.4件 → 切り上げて、1件
  6. 半期に1度(=半期) → 2回✕10% → 0.2件 → 切り上げて、1件
  7. 1年に1度(=年次) → 1回✕10% → 0.1件 → 切り上げて、1件

以上のサンプル数のうち、2.以下は、実は、統計学的にはマチガイです。(1.も統計学的には微妙です)

しかし、多くの監査法人で共通なサンプリング数のルールであり、各社は、JSOXの導入前後にコンサルタント経由で流用して、使用してきていると思います。

以上のルールで機械的に実施するのですが、、、、実務上、統制の頻度と母集団の件数が、以上のようにキレイに対応しない場合があります。

例えば、以下のようなキーコントロールがある場合、サンプル数は何件が妥当と思われますか?

例1) 売掛金の回収プロセスで、「半年ごとに、得意先の全件(だいたい200件前後)に対して残高確認を行い、回答差額の有無および内容の妥当性を確かめて、承認印を押す。」というキーコントロールの場合

回答例1) 200件✕10%×1件=20件、の残確に承認印があることを確かめる。

回答例2) 半期だからという理由で、1件の残確に承認印があることを確かめる。

例2) 人件費の計上プロセスで、「月次で、給与計算台帳上100人従業員がおり、、一人一人の給与金額が正しく、そのトータル金額も正しいことを確かめて、承認印を押す」というキーコントロールの場合

回答例1) 100件×10%×2件=20件、の人数、すなわち20人について給与計算を検算し、正しく計算がされていることを確かめる。

回答例2) 月次だからという理由で、2件の給与台帳の各々に、承認印があることを確かめる。

多くの方が、例1、例2とも 回答例1) の方を選択されると思うのですが、意外と 回答例2) だと主張される方がおられます。

その理由は、、、なんてことはない、その方の会社の経営者評価が 回答例2) の考え方だからなのです。

しかし、過去を否定することにもなるので、だいたい、その年度は、会社の方のメンツを立てて従来通りのやり方を踏襲し(=監査法人には飲み込んでもらい)、その年度の反省会で、次年度は改善して頂くことを了解して頂く、というのが実務感です。

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