上場会社の監査法人の交代、会計監査の実務などを解説しています。

(一般労働者派遣事業に係る監査証明、合意された手続きに関する)Q&A

始めに

誤解されやすい点を、以下に、Q&A形式でまとめております。

Q1

当社の税務顧問の税理士は、幸に、税理士・公認会計士であるので、この一般労働者派遣事業の更新に係る監査又は合意された手続をそのまま依頼しようと思っているのですが、問題はありますか?

A1

結論から言いますと、監査証明の発行も、合意された手続き実施結果報告書の発行も、貴社の顧問税理士(正確には税理士・公認会計士)に依頼することはできません。利害関係があるため、いわゆる独立性の点で問題があるためです。

税理士・会計士の中には、「監査はダメだけれども、合意された手続実施結果報告書の方であれば監査ではないからOKです」と誤解している方もおられます。しかし、あくまで原則として監査であること、手続について簡便的に、例外として合意された手続実施結果報告書が、しかも暫定的に許可されているに過ぎないこと、合意された手続き実施結果報告書であっても、それに関する責任は監査のそれと変わらないこと、等に鑑みれば、それも×です。

これは、顧問税理士が公認会計士の場合に限らず、監査役が公認会計士の場合なども同様です。ですので基本的には、独立の第三者の公認会計士か監査法人に依頼することになります。

Q2

更新までに間に合わないのですが、どうすればいいんですか。

A2

一般労働者派遣事業の更新は、有効期間の終了の3ヶ月前までに提出が必要になります。

ですので、これまでに間に合わないと更新できないことになりますが、救済制度があり、実際には、更新が間に合わなかった翌月までに新規で再申請すれば(通常2ヶ月後に許可がおります。)、有効期間が切れたと同時に新規の許可がおりることになります。

なお、この場合の、監査又は合意された手続の証明の要否ですが、当該再申請の時点で添付して提出する決算書が、

◆いわゆる財務3条件をみたしている場合
→ 監査又は合意された手続の証明、のいずれも無用

◆いわゆる財務3条件をみたしていない場合
→ その後の月次決算等で財務3条件を満たしている旨の「監査証明」が必要(合意された手続の証明では不可)

(念のため、「更新に間に合うタイミングで申請するとき」に、いわゆる財務3条件をみたしていない場合であれば、合意された手続の証明の方でok)

となることが通常です。実務上、誤解されることが多いので、ご留意ください。

Q3

合意された手続を、期中の月で実施してもらう手はずであったが、当社は、期中の四半期決算でも、銀行口座の残高証明書は取っていないのだが、監査の手続上、問題にならないか?

A3

結論から言いますと、銀行口座の残高証明証が無くても、他の代替的な証跡によって証拠力が十分と判断できれば、問題ありません。

おそらく、いわゆる研究報告24号の中で、「合意された手続の場合に記述されている、『預金残高を残高証明証と突合する手続き』が実施できない→合意された手続が実施不可能」と心配されていると推察します。

実際には、全体に占める預金残高の割合、期首と基準月末の残高、期中の増減等のバランスを考え、提出先の各地の労働局の担当官に突っ込まれないだろうという感触を得れば、残高証明証なしで済ませ、必要と判断すれば、時間とコストをかけて、残高証明書を取り寄せることになります。

(この点の判断の根拠は、、、、申し訳ありません。会計士としての監査経験を踏まえたプロフェッショナル・ジャッジメントであって、客観的な判断指針をここでご紹介することはできません。)

なお、この場合の、合意された手続結果報告書の文言の書き方も工夫することになります。(この点も、監査実務の経験とセンスになります。)

Q4

改正された「労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の保護等に関する法律等の一部を改正する法律」(平成27年9月30日施行)の元で、合意された手続結果報告書の扱いはどのように変わったのでしょうか?

A4

改正された「労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の保護等に関する法律等の一部を改正する法律」(平成27年9月30日施行)においては、従来の特定労働者派遣事業(届出制)及び一般労働者派遣事業(許可制)の区別が廃止され、全ての労働者派遣事業が許可制とされました。

これを受け、「労働者派遣事業関係業務取扱要領」にて規定されている、労働者派遣事業の新規許可及び許可の有効期間の更新に係る申請が許可される条件について、小規模派遣元事業主を対象に、以下のとおり資産要件が緩和されることとなりました。(新規は対象外)

従来の資産要件>

  • 資産(繰延資産及び営業権を除く。)の総額から負債の総額を控除した額(以下「基準資産額」という。)が2,000万円に当該事業主が一般労働者派遣事業を行う(ことを予定する)事業所の数を乗じた額以上であること。
  • 上記の基準資産額が、負債の総額の7分の1以上であること。
  • 事業資金として自己名義の現金・預金の額が1,500万円に当該事業主が一般労働者派遣事業を行う(ことを予定する)事業所の数を乗じた額以上であること。

<資産要件の緩和>(小規模派遣元事業主(=職業安定法第45条に規定する厚生労働大臣の許可を受け、労働者供給事業を行う労働組合等から供給される労働者を対象として、労働者派遣事業を行うことを予定する場合)への暫定的な配慮措置)

一つの事業所のみを有し、常時雇用している派遣労働者が10人以下である中小企業事業主(当分の間)
  • 基準資産額  1,000万円以上
  • 上記の基準資産額が、負債の総額の7分の1以上であること。
  • 現金・預金の額 750万円以上
(注)なお、平成27年9月30日の施行日以後3年間、認められておりました、「一つの事業所のみを有し、常時雇用している派遣労働者が5人以下である中小企業事業主」についての以下の基準は、平成30年9月末で廃止となっております。
      • 基準資産額   500万円以上
      • 上記の基準資産額が、負債の総額の7分の1以上
      • 現金・預金の額 400万円以上

Q5

なるべく安く監査をやってもらいたいのですが。。。。

A5

以前は、この種の監査に明確なルールがなかったこともあり、決算書に計上されている科目のうち、主な科目の内容を検討することで済ませても許容されていました。したがって、「ご予算の範囲でやります」という慣行が一部で横行していたようです。

他方、現在では、こと「監査証明」では、規模等に関係なく、監査計画の立案、財務諸表全体レベルでの評価、内部統制の整備及び運用状況の評価、審査(または自己チェック)等を実施し、かつ調書化(文書化)することが、例外なくマストとされています。単発な監査であっても同様です。このマストな部分をする以上、どれほど効率的に実施しても「3日程度」で「30万円前後」の価格帯になると考えます。

他方、知人の会計士がググってみたところ、この「監査証明」を「1日で」「10万円台」の報酬で請け負うと宣伝するhpもあるようです。しかし以上の事情がありますので、いくら合理化努力をしても、実施すべき手続の相当部分を省略しない原価割れしょう。(ということは、そのような会計士は、やるべき作業の相当部分を省略して、監査報告書を乱発調製している可能性が低くない、と推定されます。)

安く、いい加減に監査をしてもらって、実は財務状態が悪い状態をメンテナンスせずに派遣業を始めても、早晩、資金的に息詰まる可能性もあります。
そうではなく、相応のコストをかけても、この機会にキチンと監査を受け、財務基盤がきちんとしているという状態から派遣業をスタートした方が、精神安定的にも良いと思いますが、いかがでしょうか?

以上を踏まえ、さて、どうするか?ですが、月並みかもしれませんが、「紹介を通じて、2つ以上の会計士から、金額を含めて話を聞いてみる」のが良いと思います。

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