解説
1 担当者にとって気になる?点
業務プロセスの評価方法については、個別に間違えていた場合にはやり直し等の代替手段が取れますが、方針が間違っているとなると、その範囲は広範囲に及びますから、一大事です。
2 経理担当者に理解してほしい点
結論から言うと、このケースについて、正しくは以下の通りです。
- ・財務諸表監査で「経営者評価結果の利用」をしている場合には、不足しています。
- ・しかし、JSOXの経営者評価上は、許容されます。
以上の理由を、3月決算の会社で、運用状況テストのサンプルを4月から12月までの期間で25件抽出されたと仮定して説明します。
そもそも業務プロセスの統制が有効であると評価できるためには、ざっくりいうと、以下の2つが評価されていることを確認する必要があります。
1) 予定された統制があり、それが有効である。
2) それが4月から3月まで有効である。
上記2)を「(統制が有効であることを)期間に引き延ばす」という表現を使うこともあります。
上記1)に対応するのが、整備状況テストであり、ウォークスルーと呼ばれるテストです。
具体的には、当該業務プロセスの特定の1取引について、RCMで示された統制の証跡を収集し、予定された統制が全て有効であることを1件だけ確認します。
この1件については、上記2)との関連で、期首近くの取引であることが上記2)との関係で望ましいのですが、せめて、第1四半期中の期間の取引から抽出してあればよいというのが、実務感です。
以上のことは、財務諸表監査では、理論的には毎年欠かすことができません。「前年との異動の有無の報告だけ聞いて済ます」のでは不十分ということです。
以上のことは、本来、JSOXでも同様です。しかし、解釈としては、平成23年12月に公表された、いわゆるQ&A(改訂版)で示された「簡素化」の方針のため、前年との異動の有無を確認する程度で「許容される」という実務感です。
3 念のため補足する点
もちろん、原理原則に戻り、監査法人の方から、「前年との異動で済ますことでOK」と言われれば、やる必要はありません。
気の利いた主査であれば、ウォークスルーの仕方に理屈をつけて、毎年その全部はしないような配慮はしてくれるかもしれません。
しかし、JICPA品質管理レビューを控えている監査法人からは、少なくともその年度はウォークスルーに協力してほしいと要請される可能性が高いと思われます。
【経理担当者にとって】
整備状況テストは、JSOXとしては簡便的な代替的方法で許容される。しかし「経営者評価結果の利用」をしている場合には毎年実施する必要がある。