解説
1 経理担当者にとって気になる?点
上場企業の中には、不動産ビル会社のように、資産規模は巨額ですが、収益は賃貸料の入金だけ、費用は水道光熱費と減価償却費等だけ、という程度に収益と費用や事業内容自体がシンプルな会社を子会社に持つところがあります。
このような会社も会社法監査の要件、すなわち資本金5億円以上又は負債総額200億円超という要件を満たす場合には、会社法監査を受けさせなければなりませんが、シンプルな事業構造であれば、監査のやり方を工夫して省力化してくれないかと期待するのは無理からぬところかもしれません。
2 経理担当者に理解してほしい点
結論から言うと、不動産運営会社の場合には、
現代の監査はリスクアプローチに沿っていればよいので、不動産ビル会社の例のように事業構造がシンプルな会社であれば、期中の統制テストは殆どパスできるかもしれません。
監査法人の採る監査戦略としては、売上は前月に当月分を前受で入金されるようであれば、売上は入金ベースで検証し、前受分を正しく振替えていることを確認できれば足ります。
売上原価で金額的に重要なものは減価償却費でしょう。社員の数も少人数でしょうから給与計算も直接確認できるボリュームでしょう。
それ以外の経費も支出ベースで足りるでしょう。
したがって、統制に依拠しなくても、期末の実証手続もあっという間に終わるでしょう。
3 PMとの関連の有無
このケースは合理的な帰結の結果、監査対応を低減できるのですから、PMを考慮する必要はありません。
4 念のため補足する点
なお、開示については、事業構造に関係なく、必要な手続きを実施する必要があり、そのための監査対応は考慮しておく必要があります。
また、監査のやり方を省力化できるとなると、監査報酬もその分低額になります。
【経理担当者にとって】
経理担当者が見て、シンプルな事業構造の会社であれば、監査法人に、合理的に監査をやってもらうことを期待してよいし、協議をすべきである。