解説
1 担当者にとって気になる?点
決算の真っ只中で、発見された虚偽表示を修正しない場合は、虚偽表示の金額のトータルがPMを超過してしまうことがあります。
このような状況のとき、ほとんどの経理担当者の方は、「直ちに正しい処理に修正しなければ」という考えるかもしれませんが、中には、「だったら、その枠自体を、今から大きく変更できないのか?」と考える方もいるのではないでしょうか?
2 経理担当者に理解してほしい点
結論から申し上げると、期末の監査中に、PMを変更することは、基本的にできないはずです。
理由は、多くの監査法人では、①PMを変更する場合には、監査法人内で事前に審査を受けて、了解を取っておく必要があることと、②その審査を受けることができる期限は期末日の前まで(3月決算期の場合、3月31日まで)、という①②の自主ルールを監査マニュアルで定めているはずためです。
実際、期末の監査期間に入ってからPMを大きくする方向へ変更していたことが、監査が終了した後に発覚した場合、「監査法人自体が、無限定適正意見を出したいがために、PMを変更した」と見做されても、仕方ないでしょう。
ただし、期末前には変更する余地があります。
したがって、経理担当者におかれましては、例えば、決算前の監査法人とのミーティングで、虚偽表示の扱いで監査法人との協議が平行線になったようなケースでは、それが虚偽表示でないことの説明資料を提供するのと併せて、PMの指標、金額ベースが変わり得るような情報を提供してあげるのもアリかと思います。
3 念のため補足する点
PMを変更することに関して実務上問題となるのが、JSOXの重要性の基準値を合わせる(=引き上げる)要否です。
従来よりPMが大きくなるわけですから、JSOX上の重要性期の基準値も、従来より大きくなるわけです。ですので、本来、経営者評価側も喜ぶ話のはずですが、、、実務上は、むしろやんわり断られる(無視される?)ことの方が多いです。
これは、①内部統制の毎年の基本計画で、当年度の重要性を決めているので、変更することを説明するのが煩雑であること、②JSOXも5年が過ぎて、不備が集計されることは稀であり、敢えて重要性の金額を増やすメリットを感じないため、という2つの理由にあるようです。
【経理担当者にとって】
PMを用いて協議するのは、決算の前。
決算に入ったら、PMは羅針盤として使うのみに止め、PMを大きくしてもらおうと考えるのは、会社のためにならない。