解説
1 経理担当者にとって気になる?点
どの業界にも、方言ともいうべき、慣用語や専門用語があります。
会計士が経理担当者とコミュニケーションを取る際に、本来、誤解が無いように留意すべきです。
が、新人の会計士は社会人常識が無いため、中堅の会計士は時間に追われるため、つい慣用語や専門用語をそのまま使ってしまい、経理担当者を戸惑わせてしまうことが多々あります。
2 経理担当者に理解してほしい点
慣用語や専門用語はたくさんありますが、以下では、経理担当者に特に誤解してほしくないものに絞って紹介します。
1 金商法監査と会社法監査と内部統制監査
有価証券報告書を発行している会社は、公認会計士又は監査法人による会計監査を受けなければなりません。これを、他の監査と区別するネーミングとして「金商法監査」(きんしょうほうかんさ)といいます。金商法とは「金融商品取引法」の略です。
さらに平成20年度からスタートしました内部統制報告制度にある「内部統制監査」も金融証券取引法に基づく監査です。これはJSOXなどとも呼ばれます。
他方、資本金5億円以上又は負債200億円以上の大規模な株式会社も、会計監査を受けなければなりません。これは、「会社法監査」と呼ばれることが多いです。
上場会社は大規模な会社が多いため、「資本金5億円以上又は負債200億円以上の要件も満たしてしまうため、金商法監査と会社法監査を同時に受ける(羽目になる)会社様が多いです。
この両者は、監査法人の監査の作業上は、期中(3月決算期の会社の場合は、7月から3月中まで)は、ほとんど区別がありませんが、期末になると、監査報告書も別々に作成しますし、会社法監査の枠組みの中で監査役へ業務報告をしますが、当該会社が上場企業の場合、その報告の中で、JSOXで業務プロセスの評価及び監査での不正の有無を報告するという、会社法と金融証券取引法が複線化したような実務慣行がありますので、経理担当者は混乱することがあります。
2 社員と職員
監査法人の会計士は、ざっくりいうと監査法人の幹部として承認された会計士と、その手前から新人までの会計士とに二分されます。前者を社員、後者を職員と呼びます。
社員と職員は、監査法人内の序列も意味しますので、会計士はこの使い分けは正確です。また上の監査法人との異同でいうと、社員=監査法人 となります。
しかし、会社から見ると、社員といえば従業員のことを指すことが一般なので、上の意味での職員の会計士を社員と呼ぶ経理担当者の方がいらっしゃるために、ここで誤解が生じるときがあります。
3 主査と業務執行社員
監査チームの中で、監査現場の責任者を指します。
大手監査法人や中堅以上の監査法人では、主査は、あくまで職員の中から選抜された会計士であって、業務執行社員でないことが通常です。職務も、社員が監査の結論をするための材料を報告する役割に留まります。
ですので、重要な案件を主査に相談すると思いますが、相談しても本人に決済権限が無いので、ジャッジできません。
しかし、会社から見ると、主査といえばそのプロジェクトの最終責任者を指す名称と思う方がいらっしゃるために、ここで誤解が生じるときがあります。
4 監査チームと、専門家
監査で訪問するメンバーには、本来のメンバーとその他のメンバーがいます。会計士は本来監査の専門家のはずなのですが、その中でも特殊な領域、例えば、ITの全般統制や退職給付の数理計算やデリバティブの評価といった領域については、それに特化した監査法人の職員が、その領域だけ切り取って監査をし、監査チームの主査に報告する立て付けです。
しかし、会社側からみると、同じ会計士の人たちという括りで、このような専門家が来た日に会計処理の相談をしてしまい、やんわり断られてしまったというような誤解が生じるときがあります。
3 念のため補足する点
以上のような分かりにくい言葉が実務上、他にもあります。
A4用紙の2,3枚に収まるものでしょうから、監査法人から監査クライアントへのニュースレター中で紹介するなどしても良いと思うのですが、そのようなちょっとした努力をしている監査法人は、ほとんどいないようです。
【経理担当者にとって】
分かりにくい用語は、きちんと監査法人に聞いて、共有しましょう。