解説
1 担当者にとって気になる?点
大手監査法人ではJSOX導入後前後から、それ以外の監査法人でも数年前から、「仕訳テストをさせてください」と依頼されていると思います。
大手監査法人以外でも、数年前から監査クライアントに相談し始めていると聞いています。
仕訳テストとは、一般的に、財務諸表作成プロセスにおける重要な仕訳入力及び修正について検証する手続きのことを指します。手作業で実施しても構わないですが、仕訳明細の数が多くなるとCAAT(*1)で実施するのが効率的であり有効性も増す(検証もれがなくなる)と言われています。監査における不正リスク対応の手続の一環で、会計監査では仕訳テストを必ず実施するようになってきています(*2) 。
(*1) CAATとは、「Computer Assisted Audit Techniques」の略称で、コンピュータ利用監査技法 、データを使った監査とも呼ばれています。
(*2) なお、内部監査での仕訳テスト(CA
2 経理担当者に理解してほしい点
仕訳テストは、監査現場では、以下の①または②の意味で用いられています。
① 狭い意味では、会社の会計帳簿上、期首合計試算表の金額に、当期の全ての仕訳を累積した結果、期末合計資産表の金額に一致していることを確かめることを指します。
② 広い意味では、①に加えて、期末前後の異常な取引を精査することを指します。
経営者による内部統制の無効化に関係したリスク対応手続の一環の手続きと言われています。要は、期末に社長の指示で不正な伝票を起票された場合にそれを発見する手続きということです。
上記①は従来の紙と電卓の世界では難しく、上記②から①を除いた手続きは、これまでも監査の教科書で実施が望ましい手続として紹介されてきた手続です。
多くの大手監査法人では、海外のメンバーファームの監査マニュアル上、必須の手続きとされており、専用の監査アプリケーションソフトも強制されたことから、すでに数年前から導入・実施されていました。
そして今般、新起草委員会基準書において、以上の広い意味での仕訳テストが明記されたことから、大手監査法人以外でも上場会社の監査では必須の手続きとなりました。そのことは、日本公認会計士協会の品質管理レビューでも指摘が始まっていることからも明らかです。
そのため、大手監査法人以外の監査法人である監査クライアントでも、仕訳テストに対応してほしいという依頼が主査からなされることが想定されます。
3 念のため補足する点
本気で不正経理を使用と思ったら、データを加工して上記①が一致するように調整するでしょう。ですので、上記①を一円単位で必死に確かめたとしても、無益でしょう。
聞くところでは、大手監査法人でも上記①の意味で、以前より監査判断上の重要性が低下しているところが増えていると聞きます。
【経理担当者にとって】
仕訳テストは、監査対応として、必須の作業です。