解説
1 担当者にとって気になる?点
決算実務上、連結CF計算書の作成は非常に慌ただしいものです。それは、連結PL、連結BSが試算表ベースで概ね確定した時点から短信の発表日までの、極めて短い期間で作成しなければならない会社が少なくないためです。
そのため、科目分類の精粗や、BS科目の差額のうちキャッシュの異動が無い分の金額調整を漏らしてしまったりの小さなミスが「通常」散見されます。
これらを全て虚偽表示としてカウントされると、PMの枠を消費してしまうのではないか、PMを超過してしまうのではないか、と不安になってしまう経理担当者の方も少なくないのかもしれません。
2 経理担当者に理解してほしい点
結論から言うと、連結CF計算書に係る虚偽表示の金額のうち、3つのCF区分相互間の入り繰りは、カウントされる可能性がありますが、3つの区分内での科目の精粗が虚偽表示としてカウントされる可能性は少ないと考えます。
理由としては、連結CFの、特に営業CFの区分の分析と分類は、基本的にキリがないこと、営業CFの区分の末尾で「その他の増減」の科目を用いることができて、そこには金額基準が無いこと、等が理由です。
以上の理由は、経理担当者サイドからの開き直り的(?)な理屈でもありますが、そうしますと、経理担当者としては、①段階CFの入り繰りのミスはしないようにしつつ、手早く作成し、②監査法人へ早く引渡して早く監査を終了してもらう、のが、いたずらに悩んで不毛な時間の浪費にもならず、ベターでしょう。
ここで、私が連結CFを会社側で作成していた時に心掛けていたダンドリを紹介します。連結CF精算表を、連結CF作成ソフトではなくエクセルに作成する場合です。
以下の①から➄の順に作業します。
① 通常、連結CF精算表上の最左列に転記してある等、「当期末残高」と「前期末残高」の科目は、単純に試算表のそれではなく、連結CFの実務指針にある科目ベースに組替えるという「ひと手間」をかけておくよう、経理担当者に指導しておく。
② 連結CFの増減分析に必要な科目の内訳情報を、(試算表の科目区分ではなく)①で組替えた科目ベースで作成するよう、経理担当者に指導しておく。
※合わせて、未払法人税、法人税、その他の流動資産、その他の流動負債、有形固定資産・無形固定資産、借入金等の典型的な科目のみならず、他の科目も、分析上必要なメッシュで構わないので、極力記載しておくよう、指導しておく。
③ 上記①②を連結CF精算表に転記していく。その際、まずは単純に前期の作成方法と同じ方法、計算式、参照式で作成する。
④ その第一稿をもって監査チームの担当者に「協議」と称して会って、説明し、監査担当者がチェックした後にコメント(私の中では、虚偽表示の修正ではないつもり)をもらう。
★「基礎データとしての、科目ごとの明細表」がキチッとできていれば、監査担当者は4hあれば、見切れると思います。
⑤ 監査担当者のコメントを丸のみで連結CF精算表を修正し、監査用に「提出する」です。
以上の段取りは、監査チームの一員としての私の「自己満足」かもしれませんが、主査も本音では虚偽表示を出したくないので、以上の段取りで文句を言われた記憶はありませんし、虚偽表示も記録されておりませんでした。
3 念のため補足する点
連結CF計算種に係る、監査担当者からの指摘は、ワープロチェック的なものを除けば、①前期のCFと科目と金額を比較して、その他の金額のバランス上での指摘と、②増減を作成中にキャッシュが動いていないのにキャッシュが動いていると誤計算した項目の指摘、が殆どです。
前者の例は、「その他」にどれだけ含めるかを協議することが挙げられます。
後者の例として、「当決算で売掛金から滞留債権へ金額100を振り替えたケース」を考えます。
この場合、CF計算書上、営業キャッシュフローの区分に表示される「売掛金の増減」の金額は、前期末と当期末の残高の差額から、以上のキャッシュが動いていない金額100を控除しなければなりません。
こう説明されると、「ああ、確かにそうですね」と了解頂けるのですが、作成時には当期末と前期末の試算表ベースの差額の金額から出発してしまうため、つい、漏れてしまいがちになるところです。
この類のミスは、特に、CF計算書で試算表ベースの金額からダイレクトにCF作成ソフトで作成し、上記①の手間がない会社で頻発しますので、ご留意ください。
【経理担当者にとって】
細かいモノは、協議と称して、監査法人に事前にチェックしてもらう。