上場会社の監査法人の交代、会計監査の実務などを解説しています。

28 連結財務諸表の監査では、PM、TE、パス基準の使い方に個別財務諸表の時と違いはあるのでしょうか?

解説

1     担当者にとって気になる?点

PM、TE、パス基準に係る、これまでの説明では、個別財務諸表(=親会社の単体の財務諸表)を前提に説明してきました。

ここでは、連結財務諸表の場合におけるPMについて、単体の場合との異同を中心に説明します。

2     経理担当者に理解してほしい点

まずと、PMとTEとパス基準の考え方や相互の関係は、単体の財務諸表を前提に別の箇所で説明してきた内容と同じです。

また、連結財務諸表全体として考える際のPM算出方法も、同様です。

 

しかし、連結グループの各子会社の虚偽表示のリミッターとしてのPMは、各子会社の個別財務諸表ベースで算出したPMをそのまま使用しません。

連結財務諸表の監査上、各子会社は、連結財務諸表の構成単位の一つ、という位置づけであり、あくまで連結財務諸表ベースで考えるというルールになっています。

(なお、親会社単体はそれ自体でも監査報告書を提出するので、従来の説明通りで良い。)

 

数値例で説明します。

連結財務諸表ベースのPMが、203百万円、

親会社の個別財務諸表ベースのPMが、185百万円、

子会社Aの個別財務諸表ベースのPMが、120百万円、

子会社Bの個別財務諸表ベースのPMが、100百万円、

連結財務諸表ベースのPMに対する、親会社、子会社A及び子会社Bの個別財務諸表ベースのPMの和の割合は、203/(185+120+100)=50%

とします。

 

この場合、親会社の監査法人が親会社、子会社A、子会社Bに割当てられるPMは各々いくらでしょうか?

理論的には、表の通り4通りが考えられますが、グループ監査では案4今般のグループ監査では、案4の考え方を採用したことが明記されています。

 

親会社(注) 子会社A 子会社B 考え方
案1 185 203 203 どの子会社も連結財務諸表の一部でしかない
案2 185 120 100 各子会社の個別財務諸表ベースのPMをそのまま適用する
案3 185×50%=92.5 120×50%=60 100×50%=50 連結財務諸表ベースのPMを、各連結会社に単純に比例配分する
案4 185 2×(120×59%)=141 2×(100×49%)=98 連結財務諸表ベースのPMに係数(ここでは2)を乗じた金額を、各連結会社に比例配分する

(注)親会社は期末の有価証券報告書上、個別決算書への意見表明があるため、少なくとも単体のPM以上である必要があるため、四半期を含め共通で最大185である。

 

案1だと各子会社のPMが一番大きく出るので、虚偽表示の枠が一番大きくなるので、主査の本音としてはこれが一番都合がいいのですが、各子会社の規模の違い等を考慮していない等の点で他の案より劣ります。

案2も、連結財務諸表は個別財務諸表の寄せ集めと考えれば相応の合理性はあるのかもしれませんが、あくまで連結財務諸表の監査なので、連結ベースのPMに紐付いていない点で、整合性の点で劣ります。

 

そこで、連結ベースで算出したPMを各社に配分する考え方になり、案3又は案4のうちいずれかになります。

直感的には案3なのですが、これだと、逆に小規模の子会社Bに割当てるPMが過少な金額になってしまいます

そこでこの過少分を調整するために乗数を充てて、金額を底上げしたのが案4です。「グループ監査」では、案4が採用されています。

もちろん、案4では今度は子会社Aの重要性がむしろ過大になってしまいましたが、あくまで連結財務諸表ベースの監査ですから、よいのです。

 

3     念のため補足する点

連結財務諸表の監査特有の事情としては、以上の論点の他に、「連結グループの各子会社の個別決算書の監査を、どれほど深く監査すれば、最低限、不足なく監査を実施していた、と納得してもらえるのか?」という課題があります。

これは別のところで詳述します。

【経理担当者にとって】

連結財務諸表で使うPM、TE、パス基準は、基本的には親会社単体の個別財務諸表のそれらと同じ。

ただし各子会社のPMについては、算式上、連結財務諸表の構成単位の一つであるという調整が加わります。

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