上場会社の監査法人の交代、会計監査の実務などを解説しています。

70 ITの統制(=ITに係る業務処理統制)をキーコントロールに選定したいのですが、運用状況テストの仕方が分からないので躊躇しています。

 解説

1     担当者にとって気になる?点

IT業務処理統制の運用状況テストの方法には、「手作業による統制の場合と同様にいわゆる25件テストを実施する」のと、「IT全般統制としての運用状況テストを実施する」の2通りがあると、別のところで触れましたが、それをここに切り出して説明します。

2     経理担当者に理解してほしい点

別のところで、業務プロセスの統制のタイプは、①自動化された統制(例 商品の価格情報は単価マスターを参照して生成する)、②ITに依存した手作業の統制(例 販売システムから出力された「売掛金一覧」を営業部長が閲覧して、異常なものがないことを確認して承認する)、③手作業の統制(経理担当者が起票した会計伝票を上司が承認する)、の3タイプに分類されると説明しました。

 

この①②③の、どのタイプであっても、いわゆる25件テストを実施し、どのサンプルでも統制が有効であると認められれば、統制は「期間にわたって有効である」と評価することができます。

 

別のテーマの1)のいわゆる整備状況テストで有効と評価された心証を、3月まで引き延ばす」ために、運用状況テストを実施します。

 

そして、キーコントロールが別のテーマでの統制のタイプの②と③の場合には、当該キーコントロールをダイレクトに運用状況テストする代わりに、その統制に係るアプリケーションに対するIT全般統制の

1)       予定された統制があり、

2)       それが4月から3月まで有効である。

ことが確認できれば、「当該IT業務処理統制が「期間に渡って有効である」と見做せる、といえるのです。

したがって、以下のA、B、またはCのいずれかが成立すれば、当該業務プロセスのは有効といえることになります。

A、B、Cを比較しますと、Aは業務プロセスの手作業の統制を評価する通常のケースであり、BもAと同じことをするという意味ではイメージが難しくないと思います。

Cが他の2つとパターンが異なっており、IT全般統制に依拠するケースです。なお、このCのケースであっても、業務プロセスのウォークスルー(1件テスト)は‘逃れられない’点は留意しておく必要があります。

統制のタイプ タイプ① タイプ② タイプ③
手作業統制 IT依存手作業統制 自動化された統制
(統制の頻度が都度の場合)

統制が有効である条件

いわゆる25件テストが全て有効 いわゆる25件テストが全て有効 いわゆる25件テストが全て有効

又は

IT全般統制が有効

いわゆる25件テストが全て有効

又は

IT全般統制が有効

業務処理統制の整備状況テストが有効 A A B、C B、C
業務処理統制の運用状況テストが有効 B B
IT全般統制の整備状況テストが有効 該当無し 該当無し C C
IT全般統制の運用状況テストが有効 該当無し 該当無し C C

 

3     念のため補足する点

なお、理論的には運用状況テストのサンプルの要件は4月1日から3月31日までの間の取引になりますが、いわゆるロールフォワードの確認作業をすることで、実際には4月から12月までの間の取引でよいとされます。

【経理担当者にとって】

IT業務処理統制の運用状況テストには、2通りあります。

1つ目は、手作業の統制と同様に実施する方法であり、2つ目は、IT全般統制に依拠する方法です。

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