解説
1 経理担当者にとって気になる?点
決算進行中に虚偽表示が見つかり監査法人から修正を依頼されると、経理担当者にとって手戻りになりますので、できれば回避したいのが本音です。
ですので、PMと言われて、「虚偽表示の1つ1つがPMを超過していなければよい」と希望的に思ってしまうのかもしれません。
2 経理担当者に理解してほしい点
例えば、「PMが2,000万円で、在庫の評価減の未計上(以下「虚偽表示A」という)2,500万円で、固定資産の減損の未計上(以下「虚偽表示B」という)が1,500万円ある」場合を考えますと、
・虚偽表示A、虚偽表示Bを共に修正した
→ 虚偽表示トータル金額はPMを下回った
→ 通常、無限定適正意見になる。
・虚偽表示Aは修正したが、虚偽表示Bは修正しなかった
→ やはり、虚偽表示トータル金額はPMを下回った
→ 通常、無限定適正意見になる。
・虚偽表示Bは修正したが、虚偽表示Aは修正しなかった
→ 虚偽表示トータル金額はPMを上回ってしまった
→ 通常、無限定適正意見にはならない。
となります。
つまり虚偽表示の合計金額とPMとが比較されます。
また、個々の虚偽表示の金額をカウントする際にも注意すべき点があります。
例えば、「1千万円の売上の過大計上が発見された」ケースを考えてみましょう。
単純に考えると、虚偽表示の金額は1千万円と思ってしまいますが、それは間違いです。
その売上計上処理とセットで、売上原価の計上処理(3分法であれば、在庫の払出処理)がなされています。ですので、仮に売上原価が6百万円とすると、当該取引に係る虚偽表示の金額は、単純に1千万円ではなくて、1千万円-6百万円=4百万円となりますので、ご留意ください。
3 念のため補足する点
監査の進行中、会計処理や表示の誤りの金額の合計額が逐一集計されています。
気の利いている主査は、監査現場にあるホワイトボードで、以上の3つの金額を明記し、③の虚偽表示の最新の集計状況を明記し、監査の科目担当者が会社へ修正依頼をタイムリーに依頼できるような配慮をしています。
経理担当者が、用事で監査室に来たタイミングで、ホワイトボードを見てすぐに虚偽表示の修正依頼がタイムリーにできるようにするためです。
皆さんの監査法人の主査はどうでしょうか?
【経理担当者にとって】
虚偽表示の合計金額を、PMと比較する。