解説
1 経理担当者にとって気になる?点
決算発表の早期化を社内で検討する場合、棚卸の時間がネックになります。社内での作業工程を棚卸の専業業者に委託したりの対応にも時間短縮効果には限界があり、もっとドラスティックな方法ないかと考えるかもしれません。
2 経理担当者に理解してほしい点
以下では、上場会社では、決算作業における棚卸に要する時間の短縮化を図る事例を2つ紹介します。
①棚卸の期末前実施
まず、棚卸の実施時期をズラしてしまうことがあります。
3月決算の会社では通常9月末と3月末に実施しますが、これを8月末と2月末に変更するものです。
棚卸減耗損の振替伝票は2月末付で起票し、実際の起票は2月末でも3月末でも構いません。
②循環棚卸
もう一つに、循環棚卸を採用することです。
全ての品目を同一日に棚卸するのではなく、棚ごとに順番に一年かけて少しずつ棚卸をする方法です。
多品種少量製品を製造・販売するメーカーにおける製造部品のように、物品の点数が多い場合には、非常に有効な方法です。
3 PMとの関連の有無
上の①棚卸の期末実施、について付言すると、前2月から3月の間の棚卸減耗の発生量を事後的に検証することは、特段の事象が無い限り難しいと思います。
ですので、過去の実績上、期末の棚卸減耗が非常に少額であれば、虚偽表示を考慮する必要はないと考えます。
監査法人側も、分析的手続により異常性が認められなければ、この点を強硬に説明する仕組みをビルトインしてくれということもないと思われます。
4 念のため補足する点
どちらの方法も、開示上は、特段の記載を要しません。
どの会社にも無条件に認められるものではなく、そのためには、在庫の受払いが正確であること、棚卸減耗の影響が軽微であることを監査法人に説明できることが必要になります。
【経理担当者にとって】
3月決算会社で、棚卸を2月と8月に実施するのは、場合によっては決算早期化に有効です。