解説
1 経理担当者にとって気になる?点
経営者評価結果の利用とは、最大どこまで可能なのか?そのためには具体的にどこまで追加的な対応をすればいいかの一線がわかると、段取りがしやすいのではないでしょうか?
2 経理担当者に理解してほしい点
JSOXの経営者評価結果の利用については、その採用の有無と程度が、上場会社ごと(監査法人ごと)で幅があるのが実態です。
実務上、監査法人が経営者評価結果を利用するレベルには、ざっくり言って以下の3タイプがあります。
① 経営者評価で使用したサンプルを、そのまま流用する
② (経営者が利用したサンプルを見ずに)経営者評価上、有効、という結果をそのまま流用する
③ 過年度に有効であったことに鑑み、(サンプルを見ず、評価も行わず)経営者評価上、今年も有効であったと見做す、という判断を、そのまま流用する(以下、「ローテーション」といいます)
上記①は別のテーマで触れました。これは監査法人側にそもそも所定の明確な方法論があることから、それを経営者の評価に引き直す話が出てきました。
これに対して、上記②と③には、大手監査法人でも明確な方法論があるところばかりでもないと聞いていますし、それ以外のところで方法論を確立しているところは、一層少ないでしょう。
つまり、上記①について別のテーマで検討した、追加手続が極端な場合監査法人から求められないこともあり得ます。したがって、二重の意味でも省力効果が大きいのです。
ですので、上記①をクリアしている企業では、自社について上記②③を進めるととともに、それを監査法人にも共有してもらうよう交渉をすることをお勧めします。
なお、上記③のローテーションを採用することは省力化の意味ではメリットですが、数年ごとの実施になるので現地の緊張感が緩んで、運用状況テストで不備が出る可能性が高くなることがあります。
ですのである社では、担当者の出入りが激しい拠点は小規模でも敢えてローテーションの対象にする等の、ローテーションの組み方を工夫することで、評価作業の省力化と統制の実効性の両方を確保しようとされている上場会社もあるようです。
3 念のため補足する点
「経営者評価結果の利用」の論点は、業務プロセスの運用状況テストに限ったテーマであることを付言します。
全社的な統制、全社的な観点から評価する決算・財務報告プロセス、個別に必要と認めて追加した業務プロセス(実際には、各種引当金の計上プロセス等の、いわゆる、個別の決算・財務報告プロセス)では、上記①は業務プロセスよりも先行してJSOX導入時から共有してきたことに違和感はなく、逆に上記②③まで共有することはないと思われます。
【経理担当者にとって】
サンプルの共有ができれば、ローテーションまで共有しましょう。ローテーションの組み方は、省力化と実効性の両方を満たすよう工夫しましょう。