解説
1 経理担当者にとって気になる?点
年度末は「監査」といい、四半期は「レビュー」といいます。このように用語を変えていることから、経理担当者の中には、四半期の監査法人対応は、年度末よりも簡便で済むという期待があるかもしれません。
しかし、実際の監査対応上、四半期のときも、期待するほど監査対応がラクだと感じる経理担当者は少ないようです。同じだとしたら、経理担当者の年度末と四半期の監査対応の負荷は同じ、ということなのででしょうか?
2 経理担当者に理解してほしい点
年度末と四半期とで、経理担当者の監査対応上の負荷が変わらない(=四半期も負荷が減らない)と感じる原因は、PMとは直接の関係がなく、「四半期レビューとしての手続きが確立されていない監査法人が少なくない」、という事情のためと推察されます。
以下に、監査報告書と四半期報告書の文言を対比して引用します。
【監査報告書】
(冒頭からここまで記載省略)
監査意見
当監査法人(注2)は、上記の連結財務諸表が、我が国において一般に公正妥当と認められる企業会計の基準に準拠して、○○株式会社及び連結子会社の平成×年×月×日現在の財政状態並びに同日をもって終了する連結会計年度の経営成績及びキャッシュ・フローの状況をすべての重要な点において適正に表示しているものと認める。
【四半期レビュー報告書】
(冒頭からここまで記載省略)
監査法人の結論
当監査法人(注2)が実施した四半期レビューにおいて、上記の四半期連結財務諸表が、我が国において一般に公正妥当と認められる四半期連結財務諸表の作成基準に準拠して、○○株式会社及び連結子会社の平成×年×月×日現在の財政状態及び同日をもって終了する第×四半期連結累計期間の経営成績(注3)(注4)(注6)を適正に表示していないと信じさせる事項がすべての重要な点において認められなかった。
上下を対比しますと、監査の対象とすべき重要な点について、上の下線部分は、ざっくり言えば「正しい」と保証していると言えますが、他方、下の下線部分は、ざっくり言えば「明確に誤りだと気付いた点はなかった」と言っているだけで、どこか感想っぽいニュアンスが残っていませんか?
これがレビューです。
感想っぽい意見で済む(?)=保証までしなくてもよい、というのですから、やらねばならない作業も、相対的には少ない、すなわち狭く、浅くでよいと思われます。
実際、見聞きする範囲では、大手監査法人では、概ね、そのような手続きが適用されているようです。
他方、それ以外の監査法人では、年度末の手続きの簡便版といったレベルに留まっているところが多いようです。その理由は、単純で、四半期レビューとしての手続きが、監査実務に根付いていないためと思われます。
現行、四半期レビューの業務と調書が、JICPAによる品質管理レビューの対象外のままであるのは、もしかしたら、その辺の事情も影響しているのかもしれません。
これが、経理担当者の監査対応上、年度末と四半期とであまり変わらない(=同じ負荷がかかっている)理由と推察されます。
3 念のため補足する点
ちなみに、PMについては、結論から言うと、監査と四半期でPMを変えるように指示する監査の規定はないため、同じでよいとされています。
しかし、このことは、繰り返しになりますが、年度末と四半期の監査対応の負荷があまり変わらない理由とは、なりません。
【経理担当者にとって】
四半期レビューでのPMは、年度末のPMと、原則として同じです。
しかし、このことと、年度末の監査と、四半期レビューとで、監査対応の負荷に差を実感できない原因は、一部(中小)の監査法人の仕事の仕方に原因があると思われます。