解説
1 経理担当者にとって気になる?点
現地子会社の監査を、現地監査法人のインストラクションで対応する場合、現地監査法人からインストラクション対応を拒否される場合があります。
経理担当者にとっては、予定していたダンドリの変更になり、現地の監査のために、親会社の日本の会計士を現地に行ってもらわないといけなくなるため、大変困ってしまいます。
しかし、現地の監査人が拒否する理由が、「重要性の基準値が小さすぎる」という内容であれば、それは、親会社の日本の監査法人の、「グループ監査」の理解誤りによる可能性がありますので、現地に往査する手配の前に、親会社の監査人に再考を促す必要があるかもしれません。
2 経理担当者に理解してほしい点
別の箇所で使用した数値例を再掲します。
連結財務諸表ベースのPMが、203百万円、
親会社の個別財務諸表ベースのPMが、185百万円、
子会社Aの個別財務諸表ベースのPMが、120百万円、
子会社Bの個別財務諸表ベースのPMが、100百万円、
連結財務諸表ベースのPMに対する、親会社、子会社A及び子会社Bの個別財務諸表ベースのPMの和の割合は、203/(185+120+100)=50%
とします。
この場合、親会社の監査法人が親会社、子会社A、子会社Bに割当てられるPMは各々いくらでしょうか?
理論的には、表の通り4通りが考えられますが、グループ監査では案4今般のグループ監査では、案4の考え方を採用したことが明記されています。
親会社
(注) |
子会社A | 子会社B | 考え方 | |
案1 | (ここでは、省略) | |||
案2 | ||||
案3 | ||||
案4 | 185 | 2×
(120×59%) =141 |
2×
(100×49%) =98 |
連結財務諸表ベースのPMに係数(ここでは2)を乗じた金額を、各連結会社に比例配分する |
(注)親会社は期末の有価証券報告書上、個別決算書への意見表明があるため、少なくとも単体のPM以上である必要があるため、四半期を含め共通で最大185である。
この案4での子会社A、BのPMを算出する際に使用した係数を、仮に失念して使用しなかったとしたら、どのようなことが起こり得るでしょうか?
子会社Aの場合、PMは70百万円ゆえ、TEは35百万円、パス基準は3百万円です。
そして、もし現地監査人が設定していたPMは100百万円、TEは50百万円、パス基準は5百万円だったとしたら、どうでしょう?
PMが小さいということは、それだけ取引を細かく監査しないといけなくなります。したがって、もしインストラクションに協力しようとすると、自分たちの監査よりも細かい作業を追加しないといけなくなります。
ですので、親会社の監査法人が、現地監査人の設定したPMを下回るPMを設定してしまうと、現地監査人から協力を得られない事態が生じる可能性があるのです。
3 念のため補足する点
インストラクションは、通常、現地監査人の監査結果から、情報を提供してもらうことが暗黙の前提であり、監査のやり直しをお願いするものではありません。
現地監査人の監査での往査日数が追加されるかもしれませんし、その分、希望額が報酬に上乗せしてもらえないと、現地監査人としては協力できないしょう。
【経理担当者にとって】
PMを各子会社へ割当てる計算上、PMに係数を乗じて金額を大きくしたうえで、割り当てることは許容されています。