解説
1 担当者にとって気になる?点
経理担当者の仕事の合理化、決算の合理化、仕事の標準化のためにも、定期的に決算資料を見直していただきたいと思います。
2 経理担当者に理解してほしい点
経理担当者が直接、監査法人へ提出する資料は、以前よりも少なくて済むようになってると感じます。
いくつか要因があると思いますが、まず、JSOXの導入後、資料が標準化されたことが増えたことが挙げられます。
次に、会計システムと繋がっているPCを特定の取引の検索用に利用できる環境が増えていることが挙げられます。監査部屋に監査法人が会計帳簿を閲覧するためのPC端末と閲覧権限のみのIDとPWを与えられて監査メンバーで共有します。このおかげで、ちょっとした疑問は、経理担当者に聞く前に会計ソフトの総勘定元帳などを直接自分で検索して調べることができるようになり、監査が効率化しています。
また、期末日の換算レートや上場株式の時価などは、いまではスマホでも簡単に検索できますので、監査法人側で確認できますので、キレイな証拠資料を入れておく必要はありません。せいぜい、適用したレートや時価が明記されていれば十分です。
したがって、資料の絶対量を減らす意味でも、決算資料の要不要の棚卸や、内容の簡素化を棚卸されることをお勧めします。
棚卸のタイミングは、監査中がベストです。また、監査法人が答えやすいように聞くことです。
上手なやり方の一例は、監査中に監査メンバーが経理担当者に質問に来るときに、さりげなく「ところで、この資料、次からは作るのを止めようと思っているんですけど、よろしいでしょうか?」と聞いてみることです。
「監査で必要ですか?」とは聞かないことがポイントです。そう聞いてしまうと、資料をかき集めるのが仕事である会計士は敢えて不要とは言わない可能性が高いためです。
監査法人は直前に教えてもらっていますし、また監査上必要な資料が作られなくなったらエライことですから、絶対必要なものはそう言います。ですので、「次から作るのを止めようと思っている」といわれて、「いいともダメともそう言わなかった資料」は、しれっとスクラップの候補に挙げていいという判断ができます。
3 念のため補足する点
上手くないのは、監査法人にアドバイザリー契約でプロジェクトとして発注してしまうことです。監査が終わった後で聞かれても、細かいところは忘れてしまっていることもありますし、なにより、監査法人から、コンサルティング業務として別報酬を請求されてしまいかねません。
しかも、監査法人側の「独立性」の理屈で、いつもの監査メンバーとは別の、アドバイザリー部門の会計士(+会計士以外のスタッフ)がコアメンバーになって乗り込んできて、ゼロから自社の資料を説明することを求められる、という、2重、3重の意味で、不効率この上ない状況になってしまいます。
ですので、同じプロジェクト化でも、「自社の各部署からキーマン、幹部候補生を集めての社内プロジェクトで、監査法人には、監査業務中に、監査上の可否を確認する」のが効果的なのです。
【経理担当者にとって】
決算で作成する資料は、期末の最終段階で毎年見直すクセをつけましょう。