解説
1 経理担当者にとって気になる?点
経理担当者にとっては、講学上の話よりも、日々の経理処理について、重要性をどのように運用する(できればマニュアル化する)ことが大事と思います。
そのためには、「重要性の原則を適用して、簡便な会計処理を適用すること」と「間違った会計処理を適用すること」との違いを理解しておくことが必須です。
2 経理担当者に理解してほしい点
結論から言いますと、、、「重要性の原則を適用して簡便な会計処理を適用すること」と「間違った会計処理を適用すること」とは、経理担当者の立場からは、異なりますが、監査法人の立場からは、同じ扱いになります。
例えば、
1 売掛金と受取手形を間違えた
2 在庫の計上金額の集計計算を間違えた
3 決算早期化で、月末を計上しない
といった例は、明らかに「間違った会計処理」と言えると思います。
それでは、「普通預金の利息は少額なので、期末の通帳記入をしないまま確認しないで帳簿をつけた」というのはどうでしょうか?
これも「間違った方法」なのです。少なくとも決算期末には、帳簿上の普通預金の残高と通帳の残高を照合することは、会計の基本です。それを、「安易で手をぬいた会計」の言い訳に使ってはなりません。
ただし、「普通預金の利息は少額なので、期末の通帳記入をしないまま確認しないで帳簿をつけ、翌期の最初の記帳時に当該利息を計上することを認める」という社内規程があるときはどうでしょうか?これは、「重要性の原則を適用して簡便な会計処理を適用すること」に該当するので〇です。
重要性の原則を、そのニュアンスとして言い替えますと、効果が期待できないような「必要以上の労力をかけることはやめよう」という趣旨です。
ですから、それが組織として認められているのであれば良いのですが、個人の判断で重要性を振りかざすのはダメなのです。この点、誤解のないように注意してください。
。。。しかし、以上は、監査法人の立場からは、少し異なる見方になります。
監査法人にとっては、監査の途中で、間違いに気づいた場合には、まずその会計処理をした被監査会社の担当者と事実確認をします。
事実確認の結果、被監査会社側が間違えていたと認めて、正しい会計処理や表示に直した場合には、もはや間違えは残っていないので、「間違え」とはカウントしませんし、その経理担当者レベルの間違いを、わざわざ経理担当者の上司へ報告などしないことが通常です。
3 念のため補足する点
なお、間違いを、いつも経理担当者が修正するとは限りません。
監査法人の担当者から見て間違いと思っても、経理担当者はそれが正しい処理と思っている、そう処理したいと考えている場合があるからです。
特に、被監査会社の当期利益が小さい場合に、収益を少なくしたり費用が多く計上される会計処理への訂正を勧奨されると、経理担当者は、簡単にはハイそうですねとは訂正に応じません。
【経理担当者にとって】
間違った会計処理は、重要性のいかんにかかわらず、本来、正しく修正する必要があります。