解説
1 経理担当者にとって気になる?点
主査の会計士とのやりとりで、最近、主査の方から「貴社の虚偽表示は~」と言われたことはありませんか?
「当社で、不正か何かがあったのか!?そんな事実聞いていないが。。。」とビックリされた方もおられるかもしれません。
2 経理担当者に理解してほしい点
「虚偽表示」とは、報告される財務諸表項目の金額、分類、表示又は開示と、適用される財務報告の枠組みに準拠した場合に要求される財務諸表項目の金額、分類、表示又は開示との間の差異をいいます。(監査基準委員会報告書450「監査の過程で識別した虚偽表示の評価」3.定義より)
上場企業の決算であっても、実務上は、正確に処理した場合の金額と実際の金額との間に、大なり小なり金額の差異があることが通常です。
その場合でも、その原因はケアレスミスや合意の上の概算計上であることが、実務上は圧倒的です。
そのような差異を、従来、監査法人側では「監査差異」という用語を使っていましたが、新起草委員会報告書では、国際監査基準の英語の原文に忠実に訳した結果、「虚偽表示」という用語に置き換えられました。
同じ内容について、以前は、「監査差異」という訳語があてられており、語感的には監査差異の方がフィットしていたと感じています。
しかし、現在では訳語が「虚偽表示」と変わってしまったため、本シリーズでも以降では、虚偽表示という用語を使用します。
3 念のため補足する点
ですので、「虚偽表示」といっても、特別なコメントでもない限り、それは、単純な金額の差異でしかありませんし、実際、監査法人側でも‘デジタルな意味での差額程度’の認識しかありません。
しかし、このような用語の変更を知らない監査役や経営者が「虚偽」という字を見たら、何か不正でもあったのではないか!?と思ってしまうのは無理のないところです。
監査法人側も、用語の使い方には注意する必要があると思いますが、経理担当者側でも、そのような誤解をされないよう、説明の際に補足しておくのが無難です。
【経理担当者にとって】
社内の人には、虚偽表示の言葉の意味を、予め誤解のないように理解してもらいましょう。監査法人からの講評時などでも解説してもらいましょう。