解説
1 経理担当者にとって気になる?点
これまでの説明で、上場会社の監査法人が重要性の基準値を羅針盤にして監査を行っていることはご理解いただけたと思います。
このことは、上場していない、非公開であっても、株式会社であれば、原則として同様です。
それでは、株式会社以外の企業、例えば、学校法人や独立行政法人等の経理担当者にとっては、PMは、どう同じで、どう違うのでしょうか?
2 経理担当者に理解してほしい点
結論から言うと、学校法人や独立行政法人等の監査でも、PMを設けている監査法人が殆どです。以下では、学校法人監査について説明します。
別のところで、上場企業の監査では、重要性の基準値は、通常、税引前当期純利益の5%という、いわゆる利益基準がベースであり、その代替的な基準として売上高基準や資産基準等があると説明しましたが、学校法人の場合には、帰属収入の0.5%という、企業会計でいう売上基準がベースです。
これは、企業会計で言う利益基準、すなわち帰属収入から帰属支出を控除した収支差額金額の5%を尺度として採用すると、PMの金額が小さすぎてしまい、監査の手間がかかりすぎてしまうためです。
「監査の手間がかかる」という意味は、例えば、TEが400万円の場合と200万円の場合とを比較しますと、300万円の科目がある場合、TEが400万円と設定していれば、300万円はそれを下回る金額のため、見なくていいということになりますが、もし、TEを200万円と設定していると、300万円はそれを上回る金額のため、見なければいけない、つまり、400万円より200万円の方が、見ないといけない範囲が広いくなるので、「手間がかかる」ということになります。
つまり、学校法人の場合には、学校法人の収支構造の特徴(=補助金収入がある上で収支均衡になるモデル)から、むしろ、企業会計でのPMの金額基準と比較すると、売上規模が一番なじむという価値判断です。
ですので、この基準の代替的基準としては、残りの資産基準になります。
3 念のため補足する点
以上は大手監査法人の話や、上場会社の監査をやっている中小監査法人での話です。
学校法人の監査では、「新起草委員会報告書」に従うことはマストではありません。
後は、どこまでルールを元に監査をするのかという、その会計士のスタンスの問題かもしれません。
【経理担当者にとって】
学校監査でのPMは、「帰属収入の0.5%」を採用している監査法人が多い。