解説
1 担当者にとって気になる?点
監査報酬が高いか安いかは永遠の課題かもしれませんが、経理担当者としては合理的な範囲で監査報酬を減額してもらいたいと考えていると思います。
2 経理担当者に理解してほしい点
監査報酬には業界の価格表のようなものはありませんので、監査法人とクライアントが毎年見直して決めています。
通常は、6月の株主総会で監査法人交代の議案がなければ継続監査になります。多くの監査法人は、業務執行社員が会社の経理責任者を窓口に、当年の監査報酬の交渉を行います。(気が利く監査法人は、5月の監査役向けの説明会の時に、次年度の監査報酬の大枠をネゴっています)
監査報酬は本来、作業工数の積み上げから算出された金額からスタートすべきですが、実務上は、前年度からいくら増減するかというファジーな議論に終始し、決まった金額に合わせるように工数を仮置きして確定させます。
ですので、監査報酬の減額を提案するには、その分、監査工数を減らせる分野を把握しておく必要があります。
ここでは、このシリーズで扱っているテーマの中から、以下のものがあります。
1 JSOXの経営者評価結果の利用を検討してもらう。
監査工数に占める運用状況テストの工数は大きいものがあります。
JSOXでいう業務プロセスの運用状況テストを会社と監査法人とで別々に実施している場合には、別のテーマで説明した「経営者評価結果の利用」を採用してもらうことにより、監査工数を削減する余地が大きくなります。
2 JSOXでの運用状況テストの削減
JSOXでは、運用状況テストの母集団について、ローテーションや過年度の評価結果を流用することが認められています。
これには、業務プロセスのキーコントロールだけではなく、IT全般統制についても当てはまります。
3 支社・支店の往査の削減
支社・支店・子会社往査については、現地の取引証憑を直接現地で見てもらえること、現地に緊張感を持たせることができること、等から本社経理にとっても必要性は認めつつも、別のテーマで説明した通り、これだけの数を往査しなければならないという決まりはありません。
ですので、会社として特別の要望が無いようであれば、往査日数やメンバー数を削減し、代替的な手続きは本社で実施してもらうという要請をする余地があります。
3 念のため補足する点
監査報酬の減額を交渉するのですから、自社の経理体制や決算作業が整備されていないと、「監査に時間がかかっている」という監査法人側の主張に押し切られてしまいます。
なお、以上の話は、いわゆる大手監査法人に当てはまるものです。それ以外(準大手を含む)では、「値下げして」と言えば、値下げすると思います。具体的には、、監査の営業に来た人に見積もりを出してもらい、「こんな値段でやるという監査法人が来たのですが、、、」といってそれを見せれば、、、、、。
【経理担当者にとって】
監査報酬の減額は、まず自社の経理体制を充実させてから、具体的な削減項目を協議しましょう。