解説
1 経理担当者にとって気になる?点
虚偽表示が発見されるのが、まだ監査の始めの時期であれば修正も容易なのですが、決算発表直前の場合には、難しい判断を迫られます。
まず、このタイミングでは、社長以下へ社内的に決算数値の説明は完了していますから、それを修正するというのは、経理部的には面目丸つぶれです。
また、経理実務的にも深刻です。
別のテーマで、「決算中に修正が入ると、セグメント試算表→全社試算表→組替表→勘定科目内訳書→連結精算表、と波及して差し替えになります。」と言いましたが、決算発表直前のタイミングでは、財務諸表まで一式完成していますから、ここに加えて、「財務諸表本体と連結財務諸表本体と決算短信の中の金額、数値の増減」のプラスマイナスが逆になると、文章自体までにもその影響が波及してしまいます。
直すこと自体は徹夜で出来るかもしれませんが、そのように突貫で作成した資料には、往々にして細部で間違えてしまうリスクがあります。
2 経理担当者に理解してほしい点
監査現場の中には、「監査スケジュール中、修正期限日を設け、監査法人からの修正依頼は、その日までしか受け付けない」と明示的に約束する慣習があるところもあります。
これだけですと、監査の自由を奪うだけで、監査がやりにくいだけです。ですので、会社側も、「代わりに、その前までに、出来る限り監査に協力する」という、相互の信頼関係ができているようです。
具体的には、決算前の打ち合わせ時に、監査のスケジュール確認をする際に、修正伝票のリミットを、予め合意しておきます。つまり、その時までに、大きな修正の可能性がある内容は、全て潰しておかねばなりません。
そのためには、具体的な仕込みをしておきます。具体的には以下の2つです。
- 決算前に、仕訳の金額レベルまで詰めておき、監査時には、その通りになっていることだけ確認して終わらせてゆく
- 別のところで述べました、監査のインフラ整備をお願いし、作業を効率化する
もちろん、決算がおくれたときの締切直前には、深夜や土日に監査することも、あり得ます。しかし、通常は以上の対応で、外部公表の間際に修正依頼をすることなど、あり得ません。
なぜならば、監査上の重要性の基準値に配慮した順番に監査をしていけば、最後に発見されるかもしれない虚偽表示も、質、量ともに重要性の乏しいものに限定され、外部公表の直前にどうしても修正しなければならないような重要性のあるものは残っていないはずだからです。仕事で大事なことは、今も昔も、「重要なポイントから質問や突合をして確かめていく」という、仕事上の当たり前の要領です。
3 念のため補足する点
以上のような取り組みを聞いて、「早速自社でも取り入れて、監査法人と交渉しよう」と思う経理担当者の方がおられるかもしれません。
しかし、従来、決算が遅い、決算途中での修正が多い会社では、監査法人にそう提案しても、難色を示されるでしょう。
なお、要領の悪い会計士の中には、担当する科目をつまみ食い的に監査していき、どの科目も中途半端なま溜まっていき、公表の直前になって、10日も20日も前の決算資料について質問してくるような輩も、たまにいます。そのような会計士に対して、経理担当者が、「毎日定時の間だけでタラタラ監査しないで、もっとテキパキやってくれ!」と伝えるのは、当然の要望です。
【経理担当者にとって】
監査スケジュール中、修正期限日を設けましょう。