解説
1 担当者にとって気になる?点
セグメント情報の注記情報は、会社の取引の累積の集計結果にすぎない「はず」なのですが、その数字の積み上げの過程が複雑だと、セグメント情報を作成する経理担当者の作業ミスが生じることが少なくありません。
作成に時間かかるようですと、勢い監査に欠ける時間も少なくなり、後で、間違いがった、数年前から間違えが繰り返されて来た、ということが多いようです。
2 経理担当者に理解してほしい点
セグメント情報をスマートに作成するためには、基本的にシステム化をしなければなりません。しかし、それはすぐに、おいそれとはできません。そこで、ここでは即効性のある対処法を2つ紹介します。
まず、①マネジメントアプローチによる作成を再認識すること、が挙げられます。
企業会計基準適用指針第20号 「セグメント情報等の開示に関する会計基準の適用指針」平成 20 年 3月21 日 公表、で、マネジメントアプローチが採用され、今に至っています。
ざっくりいうと、社内で通常経営層が利用しているセグメント区分の分け方を、改めて注記情報を作成上する際に一部を組替えるような手間は無用である、という考え方です。
しかし、マネジメントアプローチアプローチのベースではなく、従来、監査法人に提出しているのと同じやり方で相も変わらずセグメント情報を作成している会社は多いです。
マネジメントアプローチは本来強制のはずなので、厳密には間違いとさえ言える話なのですが、上述のとおり、「経理担当者も時間がない中、前回と同じやり方で作成し」、「監査担当者も時間がない中、前回の調書をベースに監査して監査をして嵐のように終わってしまう」、それが毎年繰り返されていて、監査法人の担当者が交代した時に、従来の間違いが発覚する、という感じです。
次に、②PMを事前に活用すること、が挙げられます。
きちんとマネジメントアプローチで月次の管理資料を作成している会社でも、そもそもその時点で、以前に合併した部署の部分を別途個別に集計して起票している、といった手間のかかることをしている会社もあります。
その場合には、もはやその手間自体をスキップすることを予め合意しておく、というもの賢い選択です。
監査法人に向かって、「決算でわざと間違えます」という相談を事前にすることはできません」と思い込んでいる経理担当者がいるかもしれません。
しかし、監査法人は、別のテーマで述べているように、PMで考えていることが通常ですので、予め相談しておけば、想定内の話になります。
もちろん、PMの枠の一部を先取りで消費してしまうことになりますから、期末の実証手続の時にPMをオーバーするリスクはあります。ですので、例えば常に海外子会社の決算間違いにヒヤヒヤしている、という会社ではこれを選択することはできないかもしれません。
「わざと間違えるなんて!」とビックリされる経理担当者の方がおられるかもしれませんが、、、世の中には、何十年も、間違っていることを承知して開示している項目を有する決算書を開示している上場会社は、意外とあるという事実を指摘しておきたいと思います。(有価証券報告書を分析するだけで、カンタンにわかるものもあります)
また、事前に協議する際には、他に多額の虚偽表示が発生する虞のある論点は、決算前に解消しておく必要があります。
特に、繰延税金資産の回収可能性と、固定資産の減損の兆候の論点を、解消しておく必要があります。
3 念のため補足する点
冒頭で触れました通り、セグメント情報の作成と監査をスピードアップするための、システム化の考え方を説明しておきます。
一番単純なシステム化は、「全取引の伝票の起票時に該当セグメント情報の入力をする仕組みにすること」ことを提案するSEベンダーがいます。事実、部門別計算が必須である公的機関等に導入されている古めかしい会計システムの中にはそのような仕様のものがあります。
しかし、この仕組みは日々の手間を増やすだけでなく、1取引ごとに配賦して起票する手間が生じたり、なにより、上場会社は、公的機関と異なり、期中以降にセグメントを変更する可能性があり、その場合、遡及して修正入慮をするのが困難になる可能性がありますので採用しない方がよいと思います。
システム化の予算、ベンダーの経験値と対応力、日常の起票の省力化とセグメント変更の柔軟性、といった要素のバランスを見て、対応下さい。
【経理担当者にとって】
自社のセグメント情報がマネジメントアプローチに沿って作成されているか再確認し、その上で作成に手間がかかっているようであれば、事前に監査法人と虚偽表示の許容度を相談しよう。