解説
1 担当者にとって気になる?点
例えば、貸倒引当金の計上額の算出過程の個別引当分の根拠資料をと言われる場合、通常は、エクセルを印刷した滞留債権一覧表だけを提出すると思いますが、最近は、その一つ一つの記載内容の根拠資料まで求められることが増えていると思います。
2 経理担当者に理解してほしい点
会計士的には、いわゆる電子的監査証拠の論点のことです。
JSOXでは、EUC(エンド・ユーザー・コンピューティング)やスプレッドシートの論点のことです。
一般に、「コンピュータで計算したものは正しい(に決まっている)」という思い込みがあります。
しかし、会計監査では、コンピュータであっても、入力誤り、計算ロジック誤り、出力誤りといった財務報告リスクがありうる、という前提からスタートします。
(さしずめエクセルでしたら、入力すべきセルを間違える、参照箇所や関数の引数を間違える、総合計の金額が非表示になってしまっている、といった誤りでしょうか。)
そこで、コンピュータ等からのアウトプットであっても、これを鵜呑みにせず、少なくともその一部の結果を検証した上で利用することが求められています。
経理担当者のところに社内から様々な根拠資料が提出されると思いますが、経理担当者が作成するエクセル帳票には複雑なマクロ機能を利用していないのであれば、以下の二つの典型的なものについてのみ監査対応をすれば間に合います。
1 滞留債権リストの根拠資料
債権リストは、会社によって、エクセルでワープロ的に作成しているケースと、販売管理システムなどからの出力帳票であるケースとに、二分されます。
いずれにしても、監査法人が抽出した分についてのみ、滞留の状況や回収可能性がまとめられている社内資料をか、それが無い場合には客先との窓口担当者から説明してもらえば足ります。
どの滞留債権について説明を要するかは、監査法人側で選ぶ話であるため、予め全部の滞留先の社内資料を決算ファイルに綴っておく(別のテーマ参照)ことはオーバーワークになりますから、止めておきましょう。
2 在庫のリスト
期末の棚卸によって数量が置き換わっていたり、また時価評価によって単価が置き換わっている品目があります。
監査対応上、すなわち説明の便宜上、おススメするのは、数量や単価が置き換わった品目を、棚卸原票や時価の根拠資料でダイレクトに説明することが作業負荷が少ないと思われます。
電子監査証拠については電子情報は証拠と見做さないスタンスのため、もし数量または単価が置き換わっていない品目を検証しようとすると、在庫システム中の電子情報は説明資料にならないという
は、理屈では、最初の入庫時の情報までを、入庫伝票と出庫伝票と原始入庫伝票で遡って追跡しないといけないためです。
3 念のため補足する点
なお、検証方法については、厳密な検証方法を心配する必要はないと思います。
エクセル上に記載されているありとあらゆるデータをカウントし、母集団化し、全てにナンバーリングすることは不可能ですので、乱数抽出することは無理なためです。
ですので、抽出される情報は、監査担当者が任意に抽出するものです。またその懐疑心も、合っているであろう点を確認的に見るというものです。
またJSOX上の扱いですが、JSOX導入前後にはトピックになっていましたが、最近は全くトピックになっていません。
現状では、エクセルにマクロ等を使用している会社では従来ベースでよく、そうでない上場企業では、過去に計算誤りでもなければ縮小を検討してもよいかもしれません。
【経理担当者にとって】
電子的監査証拠は、財務諸表監査で、言われた範囲で対応してください。