解説
1 担当者にとって気になる?点
減価償却費を決算前の3月中に確定しておくと、決算作業の負荷が軽減されますし、決算での原価計算を早く着手できる等の点でも大いにメリットがあると思います。
上場企業の経理担当者のみならず、学校法人や独立行政法人の経理担当者にも役に立つと思います。
2 経理担当者に理解してほしい点
減価償却費は通常、月次では予算を月割りし、四半期決算ごとに洗替えて確定値を計上すると思います。ですので年度末は、通常4月上旬に確定値の伝票を計上していると思います。
これを3月中に確定させるためには、有形固定資産の取得と廃却を2月末までで完了させることです。換言すると、3月中の取得と廃却は原則として認めない運用を徹底することです。
減価償却費を3月中に確定させるためには、会計処理を要する取引を受け付けることができるのは2月末日までであり、3月1日以降分は全て4月1日以降になると、社内に周知徹底し、例外を認めない運用をやりきることです。
廃棄は外部に出さなければいいので、3月中に廃棄取引を発生させないことは比較的容易です。そこで、「3月中に想定外で備品や設備が破損した場合」の対応を予め整理しておくことが肝要です。
「ひと月だけレンタルでしのぐ」というのはかえって煩雑ですから取得せざるを得ませんが、会計処理上は日付を3月末日付けで計上し、減価償却も4月1日から開始してしまいます。
この場合、会計上は、「例外的に3月に取得せざるを得なかった有形固定資産の減価償却費の1か月分の償却費」が虚偽表示(監査差異)になります。
しかし、社内で取得・廃棄を2月末で完了できる運用が徹底していれば、この金額を集計して提出しろという監査法人はまずいないでしょう。件数はわずかでありその1か月分だけの減価償却費は僅少であると見做せるからです。
ただ心配であれば、そもそも減価償却費の経理規程上、「当月取得した資産は、当月末日付で取得し翌日から事業の用に供するものと見做して処理する」旨の一文を入れておけばよいでしょう。
自社の経理処理としても妥当ですし、社内資料中、「事業の供に要した日」を毎回記載する必要もなくなります。
なお、法人税法上は、損金計上額が1か月分少なくなるので所得が増加することになります。近時の税務調査上のスタンスでは課税所得が減少する方向への修正はスルーすることが多いので、リスクはないでしょう。
3 念のため補足する点
このような会社では、毎年、年度末に社内イントラネット上に、「固定資産の年度末の取得・廃却へのご協力のお願い」といったタイトルの文書をアップしているでしょう。
もしも監査法人から、社内で取得・廃棄を2月末で完了できる運用が徹底していることを示す証跡を提出してほしいと監査法人から求められたら、それをハードコピーして渡してあげれば足ります。
【経理担当者にとって】
決算早期化対策として、固定資産の減価償却を2月末残高ベースで計算することをご検討ください。