解説
1 担当者にとって気になる?点
発送した残確に記載した金額と、相手先の回答金額とは一致しないことが多々あります。自社の売上は出荷基準であり仕入は検収基準であることを考えると、むしろ不一致な方が通常だとさえ思える中で、なぜ監査法人が、ある時は病的なほどに一致を確認しようとするのでしょうか?
2 経理担当者に理解してほしい点
監査法人の作業は一見、上記の「一致」を確かめているように見えるかもしれませんが、実際の作業はやはり「差額と、その理由を確かめています。ただ、そう見えるとしたら、その会計士のコミュニケーション能力は低いのでしょう。
残確は、原則として全件回収します。
個人宛に送付したものは捨てられた場合もあり、フォローの結果それが判明した場合には、再送したものを回収します。
また、誤記されていると思われるものは金融機関のものでも、再送付して再回収する必要があります。
繰り返しですが、回答額に差異があることが、債権・債務の場合にはよくあります。その差の理由を分析するやり方としては、通常は、入金記録・出金記録(=総勘定元帳の増減)でトレースすることになりますし、サイトが長くて無理である場合には、請求書等を提供してもらうことになります。
そして、自社の計上額が誤っていた場合には、それがパス基準を超える金額であれば粛々と虚偽表示としてカウントされることになります。
債権・債務の残確で、回答差異の金額がそのまま単純に虚偽表示の金額になるわけではありません。その回答差額を分析した結果、会社の帳簿での計上額とあるべき金額との差額が虚偽表示の金額になります。
残確は、全体の残高の一部に対して発送しています。
ですので、虚偽表示の金額は、回収未了分や回答の差異の金額そのものではなくて、別のテーマで述べた考え方を適用し、あるべき金額として推定された金額が虚偽表示の金額になる点に留意する必要があります。
計上額の誤りで一番多いのが、売上の出荷前計上であることは、多くの会計士の共通認識かと思います。ですので、大口の計上については、基本、疑ってかかっていると言っても過言ではありません。ですので、決算(監査対応)をスムーズに進めるためには、お手数ですが、大口の計上については予め監査法人のために根拠資料を用意しておくことも必要です。
3 念のため補足する点
回収した残確の処理方法は、大きく2通りがあるようです。
1つ目は、回収したものの金額を、監査チーム担当者が一覧表を作成し、照会金額と回答金額とに差が生じているものを経理担当者へ連絡し、社内で調査してもらうやり方。
もう1つは回収したものをそのまま経理担当者へFAXかpdfで転送し、上で監査チーム担当者がする作業を、経理担当者が代わってするやり方。
私見では、後者だと大変助かるなあと思うのが実感です。
【経理担当者にとって】
債権・債務の残確の回収フェーズでは、回答差異の説明の準備に注力してください。