解説
1 経理担当者にとって気になる?点
決算時の監査中に、虚偽表示が見つかることがあります。
重要性の基準値を枠と捉えると、不適正意見のリスクが高まるのであれば、一義的には、無限定適正意見がほしい会社にとっても、無限定適正意見を出したい監査法人にとっても、出来る限り修正したほうがよいということになります。
しかし、修正に時間と手間を要するものの場合には、経理担当者としてはスキップしたいものもありますが、監査上、項目によって、必須度に違いがあるのでしょうか?
2 経理担当者に理解してほしい点
結論から言うと、会計士にとっては、虚偽表示は等しく同じものです。
ですので、修正するに手間がかかるもの、波及的に修正を要する、つまり影響が大きいものは、主査と相談して、敢えて修正しないというのはアリで、実際、監査現場でよく行われていることです。
経理担当者にとって、修正しにくい最たるものは製造経費の修正でしょう。理由は、原価計算を回し直す必要があるからです。製造経費の検収漏れや、製品保証引当金を取り崩す処理をすべきところ、経費で計上してしまった場合などは、金額自体に重要性が無くても、会計・監査上、相対的に重要な引当金に関連するものなので、修正する羽目になることが多いようです。
また、法人税法上損金算入できない評価損なども、税効果、繰延税金資産又は繰延税金負債の修正に波及するため、修正したくありません。
先行売上計上の取消も、売上計上の取消(売掛金の減少)に加えて、対応する売上原価を在庫へ振り戻す修正がセットになります。
虚偽表示の典型的なものは売上のカットオフ(=期ズレ、先行売上)です。
決算期間中なので、この後にも虚偽表示が発見される可能性があります。今、発覚したものが最後である保証はありません。ですので、修正の作業負担がないものであれば、修正してしまった方が心配の種が少なくなります。
3 念のため補足する点
決算中に修正が入ると、セグメントごとの試算表の修正→全社試算表の修正→組替表の修正→勘定科目内訳書の修正→連結精算表の修正、と波及して差し替えになります。
すると、会計士側でも監査調書の作り直しになります。
ですので、実は監査法人側でも修正なしで行きたいのが本音であるのです。
【経理担当者にとって】
虚偽表示を修正するかどうかの判断は、それが発覚した時期と、修正の手間とを勘案して、監査法人と協議して、決める余地が多分にあります。