解説
1 担当者にとって気になる?点
別のテーマで仕訳テストなるものの概要と、監査対応上不可避であることはご了解頂けたと思います。当テーマでは、当該別のテーマでご説明しました、「①狭い意味では、会社の会計帳簿上、期首合計試算表の金額に、当期の全ての仕訳を累積した結果、期末合計資産表の金額に一致していること」の具体的なやり方を説明します。
2 経理担当者に理解してほしい点
例えば、「毎月の月次合計残高試算表を12枚収集して、借方合計金額と貸方合計金額を計算し、それらが年次合計試算表の借方合計金額と貸方合計金額に一致している」というレベル感では、不足だということです。合計金額ベースでの一致を確かめただけでは、科目の恣意的な変更を発見できないという理屈です。
具体的に対応頂きたいレベル感としては、「仕訳データをCSV形式でクライアントから提供してもらい、それを試算表の科目ごとに借方と貸方で一年分積算した金額を作り、それと期首合計試算表の期首残高金額と合算した結果が期末合計試算表の期末残高金額と一致していることを確かめる」というところです。
私の経験上、以上の説明だけでお願いした結果、凡そイメージ通りのファイルを提供して頂けました。
会計システムの仕訳データの持ち方(レコード)は会計システムごとに多様であり、仕訳形式で一行ずつ横に持つタイプや、借方と貸方で別々のフラグを立てて縦に一行で持つタイプがあります。
またその集計方法も、経理担当者ごとの発想が異なり、仕訳データをダイレクトに集計する方法や、いったんテーブル化した上で集計する方法がありました。
使用する関数も、SUMIF関数をベースにしたり、VLOOK関数をベースにしたりとバラエティがあります。
作業上の留意点としては、「100%を求める必要はない」という点です。
よくある例に、試算表中の流動資産計といった項目や、仮払消費税等の科目や仮受消費税等の科目の金額は、エクセルでVLOOKUP関数で重複計算されてしまい、最後のあるべき期末合計残高試算表の金額と不一致になってしまうことがあります。
しかし、仕訳テストの目的からは、これらの項目の金額が不一致でもそれらの項目や科目を読み飛ばせば足りますので、全く問題はありません。監査法人側が調書にその旨を記述すれば足ります。不要な金額についての不一致ですから、虚偽表示云々もまったく心配無用です。
3 念のため補足する点
経理担当者に仕訳テストを依頼するタイミングは、経理担当者が試行錯誤する時間を確保できるようにするためにも、早めにこしたことはありません。
【経理担当者にとって】
仕訳テストは、科目ごとに 期首残高+当期の増減=期末残高 が成立するように仕訳データを集計できればよい。