上場会社の監査法人の交代、会計監査の実務などを解説しています。

20 海外子会社の決算で配慮すべきことには、どのようなことがあるのでしょうか?

解説

1     経理担当者にとって気になる?点

海外子会社の経理処理を、本社できめ細かくフォローできている会社は、少数派なのではないかと思います。

現地の経理担当者は英語はできるが日本語は分からない現地人であることが殆どであるため、勢い、現地の会計事務所(監査法人)に委託し、決算までおもりしてもらっていることが少なくないと思います。

そして、親会社の決算期が3月であれば、子会社の決算期を12月に設定して、4月冒頭には子会社から監査報告書付きの決算書が到着するはずだと思っていますが、実際には、連結パッケージは4月に入ってから、監査報告書付きの決算書は5月に入ってからやっと送付されてくる、ということが実務上、頻発しています。

決算期に、本社で、経理担当者と監査法人が、「なぜ、監査報告書付きの決算書が、決算から5月もかかって到着するのだろう?」と不思議がっている光景が、多くの上場会社で見られます。

2     経理担当者に理解してほしい点

海外子会社の監査はコワイです。決算短信を公表後、有報を作成するとき等に、実は子会社で虚偽表示あったと本社へ報告がなされることは少なくありません。少額であれば問題ないと思いますが、PMを超過する場合は難しい対応を迫られます。監査実務的には、監査の終盤に、ドカーンと多額の虚偽表示が判明することが、監査意見上、不適正意見に直結するリスクになります。

 

海外子会社における決算では、日本の監査法人よりも遥かに融通の利かない現地監査法人による監査を受けており、見解の相違を埋められぬまま、海外子会社の経理担当者の知らぬところで、現地監査法人と親会社の監査法人間でのインストラクションのやりとりがなれて、海外子会社の虚偽表示アリと報告されてしまうことが頻発しています。

 

外国には、例えばタイのように、上場・非上場の区別なく会計監査が義務付けられている国があります。そのような国では、海外子会社が現地の会計事務所と、監査スケジュールを早期にできるように、協議をしておかないと、どんどん監査が後回しにされてしまいます。

そして、協議しても、毎年決算が遅く、スケジュールを守れない海外子会社は、その後、現地の会計事務所から後回しにされてしまうことが、よくあります。

このような海外子会社の決算を本社側ではどのように管理すればよいのでしょうか?やはり最低、虚偽表示の可能性を連結財務諸表のグループ監査で割り当てられたPM以下の金額に抑える指導が必要です。

ただし、連単倍率が大きい企業グループであれば、当該海外子会社から生じうる虚偽表示のトータル金額が割り当てられたPMを超過するリスクはそう大きくはないことが殆どです。

それができている海外子会社であれば、後は、決算スケジュールの調整とフォローだけでも虚偽表示リスクは低減できると思います。

3     念のため補足する点

海外子会社の現地の決算と監査が遅れた原因の一つに、実は、現地子会社の日本人責任者が、在庫の評価減の要否について、監査法人との協議が長引いていたためだったという事例がありました。

よく聞いてみると、現地の会計事務所の監査スタッフの事実誤認やら、監査チーム内の情報共有不足やら、評価減による業績悪化を嫌う現地の日本人責任者の抵抗やらと、複数の原因に基づくものでした。

【経理担当者にとって】

海外子会社の決算は伏魔殿です。せめて、連結上、当該海外子会社に割当てられたPM以下に虚偽表示のトータル金額が収まるような指導をしましょう。

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