解説
1 経理担当者にとって気になる?点
監査法人の監査がダンドリよく進まないと、結局、そのツケが経理担当者へ跳ね返ってきます。
ですので、連結財務諸表の監査上、監査法人の主査が腐心している点を、予め経理担当者に知って頂き、アシストをして頂くことにより、スムーズな監査がなされ、それは経理担当者の業務にも良い影響を与えるものと考えます。
2 経理担当者に理解してほしい点
単体の財務諸表監査の場合と比較して、主査が連結財務諸表監査で腐心する点には、以下のようなものがあります。
1 子会社を監査する時期
地理的にも国内外に分散している子会社・関連会社の決算を、親会社と同じ工数をかけて親会社の監査時期と同時に行うことは、一時期に大人数を監査現場に投入することになるので、無理です。
そこで、連結決算のスケジュール上、子会社から先に決算が固まっていくようになっていますので、親会社の監査の開始の前に、主な子会社や親会社の主力工場や主力営業所に往査に行き、科目を絞って監査をすることにし、残りは、本社の期末監査時に、分析的手続を追加して監査を済ませる、というダンドリが多いと思います。
2 決算期が異なる子会社
多くの親会社は3月決算だと思いますが、海外の会社は12月決算の会社が圧倒的です。
日本の連結財務諸表原則では、決算期のズレが3か月以内であれば、イレギュラーな金額の大きい取引以外は、特段の調整なしに単純に合算していいことになっているためです。
3 別の監査法人が担当している子会社等の監査
監査の世界では、親会社の監査法人から当該子会社の監査法人へ、直接、監査の結果を教えてもらうという慣習があります。
その際にやり取りする書類の名称を取ってインストラクションと呼ばれているものです。
これによって、当該子会社も、監査対応は自社の監査法人の1回のみで済むこと、親会社の監査法人の負担も軽減されること、子会社の監査法人もインストラクション対応料として報酬を請求することが可能になるという、当事者にとって良い仕組みです。
3 念のため補足する点
上の3つのうち、2.3.の課題が海外の子会社に特に当てはまります。つまり、主査にとって、「後で論理的に説明できるように、子会社、特に海外の子会社を監査すること」が、一番の課題になります。
大手の監査法人の監査マニュアルには、温度差はありますが、この点がカバーされており、それを実行することは大変ですが、監査のロジック上、悩むことはあまりありませんでした。
他方、中堅監査法人以下ではどうかというと、この点について日本の監査の基準上は明文の規定が無かったため、主査の主観によって決まっていたというのが実態と思われます。
(実際は、監査報酬から逆算して見合う手間の範囲でベストを尽くしていた、という感じでしょう。)
【経理担当者にとって】
近時、親会社の監査法人による、子会社に対する監査方針には、明確な指針がでています。