解説
1 担当者にとって気になる?点
JSOXの経営者評価は社内的には毎年8月前後にキックオフし、当年度の方針等だけはその月の取締役会で承認されていることが多いです。
最初に取締役会に諮っているために、その後、何か変更がある場合には、その都度取締役会へ上梓しないといけないと思ってしまう方は少なくないと思います。
2 経理担当者に理解してほしい点
JSOXの重要性の金額と、財務諸表監査での重要性の基準値(PM)とは、原則として一致させます。
理由は、JSOXの決算・財務報告プロセスの監査の際に不備が発覚したり、逆に、財務諸表監査の側で虚偽表示が発覚したりする場合、相手の方でも同時にカウントする必要があるため、同じ基準に揃えておく必要があるからです。
つまり、両者は一致していることが原則です。
他方、JSOXの金額的重要性は決定後、通常、期中は変更しませんが、他方、別の箇所で、監査法人はPMを期中に変更する可能性があることを説明しましたので、PMの方が変更されてしまうと、ダブルスタンダードの状況に陥ってしまいます。
実務上は、そうなっったとしても、①当初のPMが2000万円、②監査法人側が変更して、3000万円、③虚偽表示の合計金額が500万円、というバランスに収まることが殆どのため、結果的に、経営者評価の結果も監査の結果も双方とも適正のレンジに収まるのが実務感です。
上の、②で3、000万円にした場合に、JSOXの監査を厳密に考えて、「ダブルスタンダードで進めるのでは?」と思われる方もおられるかもしれません。
この点、監査法人側の屁理屈としては、同86号で、財務諸表監査において、いわゆる経営者評価結果の利用が勧奨されているため、単一の判断基準でやっています」という言い方になるのかもしれません。
3 念のため補足する点
しかし、たまに、上のケースで、③が2,500万という金額になると、何も調整しないと経営者評価の結果は不適正で監査の結果は適正という、ある意味おかしな結果になってしまいますので、このような場合に限って双方が再協議し、JSOXの金額的重要性の大きさを、3,000万円に引き上げることになります。
しかし、繰り返しですが、このような場合はレアです。
【経理担当者にとって】
主査が期中に、PMを引き上げても、JSOX上の対応を調整することは通常、無用です。