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圧縮記帳に関する監査上の取扱い (昭和58年3月29日)

解説

1.概要

圧縮記帳に関する監査上の取扱いを規定している。古い規則のため、監査上の取扱いというタイトルではあるが、会社側としては、開示・決算上、留意する必要がある。

2.ポイント

会計理論上は、直接控除法よりも、利益処分方式がベターです。買ったときの金額の情報がBS上開示される点で情報提供上望ましいと考えるためです。

しかし、それでは、その後の減価償却計算(決算、法人税申告)で煩雑であり、また、株主資本等変動計算書に準備金が計上されますが、、、それはかえって一般の人には分かりにくい代物です。

ので、いわゆる「連続性の要件」を満たせば、例外的に、直接減額を許容する途を残したものです。

。。。以上が建前ですが、以下が実際の意味。

この報告が出た時代は、、、、会社法>税法>>>会計 であり、会計・監査の基準は、税法実務を飲み込みつつ、ちょこっと筋論を通す、という基準のオンパレードでした(減価償却関連など、最たるものでしょう)

圧縮記帳については、商法が引当金について改正したのを機に、税法も利益処分方式を選択することを認める改正をしたタイミングに便乗(!)して、しれっと改正していました。

①:従来は、直接減額法のみ

→ ②:でも、原則は、利益処分方式へ

→ ③戻って、交換と収用は、キーワード「連続性」を根拠に、直接減額方式も許容です(おいおい、②でダメとしておいて、何例外を言ってんだよー)

という、分かりにくいものです。

なお、経理実務的な知識として、直接減額の方ではなく税額控除の方を選択する方が、節税になる場合もあります。四半期開示のため、年度末まで待てませんので、早めに税額を試算して、対策を早めにしておく必要があります。

3.参照程度

圧縮記帳の取引が生じましたら、参照は必須です。ボリュームは少ないです。

 

 

4.付録

当委員会報告のみ、以下に原文を引用します。なお、若干の誤植等が含まれる可能性があります:

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監査第一委員会報特第43号

圧縮記帳に関する監査上の取扱い

昭和58年3月29日

監査第一委員会

 

まえがき

 

従来の監査委員会報告第23号では、法人税法及び租税特別措置法(以下「税法」という。)に規定する固定資産の圧縮記帳の会計処理について、利益処分方式が認められているものについては、優先してこの方式を採用することが望ましいとしながらも、商法第285条の取得原価主義の規定に照らして問題があるとされてきた直接減額方式によることも、監査上妥当な会計処理とみなして取り扱ってきた。

今回、商法第287条ノ2の改正により、固定資産の圧縮記帳に関する税法の規定を適用して計上される圧縮記帳引当金は引当金に該当しないこととなり、また、これに関連して、税法も、従来、圧縮記帳に関し利益処分方式を認めていなかった減価償却資産について、非減価償却資産と同様に利益処分方式を認めることに改正された。このような状況の変化に対応して、監査委員会報告第23号の見直しを行った結果、同報告を廃止して、今後は次のように取り扱うこととした。

 

一 監査上の取扱い

 

固定資産の圧縮記帳に関する税法の規定を適用して行う会計処理について、次の聯合は、当面、監査上妥当なものとして取り扱う。

1.交換により譲渡資産と同一種類、同一用途の固定資産を取得し、取得資産の取得価額として、譲渡資産の帳簿価額を付した場合。

2.収用等により資産を譲渡し新たに取得した資産が、譲渡資産と同一種類、同一用途である等取得資産の価額として譲渡資産の帳簿価額を付すことが適当と認められるときに、譲渡益相当額をその取得価額から控除した場合。

 

(注1) 国庫補助金、工事負担金等により取得した固定資産について、国庫補助金、工事負担金等に相当する金額をその取得価額から控除した場合も、企業会計原則注解24の趣旨に照らして、監査上妥当なものとして取り扱う。

(注2) 上記2.に該当する場合で、収用等により資産を譲渡した事業年度又は国庫補助金、工事負担金等を受けた事業年度に圧縮対象資産を取得できなかった場合の圧縮記帳見込額は、未決算特別勘定等の適当な科目で貸借対照表の負値の部に計上する。

なお、上記以外の場合の未決算特別勘定等に相当する譲渡益等は、利益処分により積立金とすることとなる。

(注3) 上記2.に該当する場合には、取得資産につき圧縮記帳を行った旨及び圧縮額を財務諸表に注記する。

 

二 経過措置

 

1.昭和57年10月1日以後最初に終了する事業年度までの圧縮記帳に関する監査上の取扱いは、監査委員会報告第23号によることができる。

2.本取扱いが適用される事業年度の前の事業年度から繰り越した未決算特別勘定等の会計処理については、監査委員会報告第23号の取扱いによることができる。

 

解 説

 

I はじめに

 

従来、法人税法及び租税特別措置法(以下「税法」という。)に規定する圧縮記帳に関する会計処理及び表示と監査上の取扱いは、監査委員会報告第23号(昭和51年4月6日)によってきた。当該委員会報告では、商法第285条の取得原価主義の規定に照らし問題があるとされてきた税法上の圧縮記帳額を直接減額方式によることも監査上妥当な会計処理とみなして取り扱ってきた。また、圧縮記帳額を会社が旧商法第287条ノ2の引当金に計上することを合法的に説明し得る場合には、圧縮記帳引当金としていわゆる特定引当金の部に計上することも認めていた。ただし、非減価償却資産の圧縮記帳のように利益処分方式が認められているものについては、優先してこの方式を採用することが望ましいとしていた。

今回、商法鋪287条ノ2の改正により、圧縮記帳引当金は引当金に該当しないことが明らかになり、税法もこの商法改正に伴って、従来、利益処分方式が認められなかった減価償却資産についても非減価償却資産と同様に利益処分方式を認めるように改正された。

このような状況の変化に対応して、監査委貝会報告第23号の見直しを行って作成されたのが本委員報告である。監査委員会報告第23号では、国庫補助金、工事負担金、保険差益等による固定資産の取得(法人税法の規定によるもの)と収用又は特定資産の買換え等(租税特別措置法の規定によるもの)に限って、その圧縮記帳に関する会計処理及び表示と監査上の取扱いを定めていたが、本委員会報告においては、会計上の固定資産間の交換取引という観点から、広く税法上の圧縮記帳を見直すこととした。また、商法第285条の取得原価主義の規定への準拠性をも併せて検討したことは言うまでもない。

ただし、後述するとおり、現状では固定資産の交換取引に関する会計慣行が成熟しているとは言い難いので、本委員会報告は、当分の間の監査上の取扱いを定めることにした。

 

Ⅱ 交換取引に関する会計処理

 

固定資産間の交換取引に関する会計処理には、大別して下記の二つの見解がある。

1 交換により該渡した資産(以下「譲渡資産」という。)の帳簿価額を交換により取得した資産(以下「取得資産」という。)の取得価額とする(連続意見書第3・第1の四の4に該当する。以下「連続意見書」という。)。

2 譲渡資産又は取得資産の公正な市場価額を取得資産の取得価額とする。

1.の見解は、収益の認識を重視するもので、この論拠は次のとおりである。

(1)交換は等価交換を原則とするので、交換によって損益は生じないこと。

(2)貨幣又は貨幣等価物と固定資産との交換でない限り、譲渡資産から生ずる損益を実現したものとみることができないこと。

(3)譲渡資産の簿価は、未回収の支出額を表わすので、これを取得資産の取得価額と考えれば、取得原価主義にも反しないこと。

(4)同一種類、同一用途の固定資産間の交換の場合は、譲渡資産と取得資産との間に連続性が認められるので、会計上両者を同一視することができ、実質的に取引がなかったものと考えられること。

連続意見書は、この見解に立ち、主として上記(4)の論拠に基づいていると考えられる。

ただし、取得資産と譲渡資産との同一性に関しては、両者が同一種類であれば、同一用途まで考えなくてもよいとする意見や同一種類のほかに同一用途まで考えるべきだとする意見があるようである。本委員会報告では、いわゆる固定資産の交換取引ばかりでなく、租税特別措置法に定める収用等による固定資産の取得等も、要件さえ備えれば交換取引に準ずるものとして取り上げ実務的対応を図ったことから、取得資産と譲渡資産の同一性の内容として「同一種類・同一用途」という要件を定めることにした。

次に、2.の見解は、取得原価の測定を重視し、交換取引による取得資産の取得価額を譲渡資産又は当該取得資産の公正な市場価額とするものであり、1.の見解のように交換資産間の同一性は考えていない。前者の譲渡資産の公正な市場価額を取得資産の取得価額とする考え方は、取得原価を支出額(この場合は譲渡資産の市場価額相当額)を基準として測定するところに合理性がある。後者の取得資産の公正な市場価額をその取得原価とする考え方には、支出額を取得原価とする意味においては合理性に欠けるか,公正な取引による市場価額が本来取得原価たる支出額になるべきだと考えれば、取得資産の公正な市場価額こそが取得原価となり正当化される。いずれにしろ、交換取引は等価交換が前提であるから、譲渡資産及び取得資産の公正な市場価額は原則として同一である。よって、これらを一括して2.の見解とした。

この2.の見解に基づく会計処理には、交換という経済行為で企業の獲得こそ利得や交換後の財政状態を正しく表示でき、さらに、将来の損益計算例えば減価償却費の計算)のために正しい基礎を提供するという利点が見うけられる。しかし、一方において、資産の公正な市場価額の客観的な決定か困難であるという難点がある。

以上のように、交換取引に関する見解には大別して二つのものがあるが、いずれを妥当なものと考えるかは、意見が分かれている。したがって、本委員会報告では、いずれの見解をとるかは、交換取引の実態に応じ、各企業が考えればよいこととし、当面、税法の規定を適用して行う固定資産の交換取引(交換取引に準ずるものを含む。)の会計処理を監査上どのように取り扱うかを明らかにすることに主眼を置いた。

 

Ⅲ 監査上の取扱いについて

 

本委員会報告では、下記に示す観点から、交換により譲渡資産と同一諏類、同一用途の固定資産を取得した場合及び交換に準じ、収用等によって同一種類、同一用途の固定資産を取得した場合の圧縮記帳額の直接減額方式を監査上妥当なものとして取り扱うことにした。また、上記のほか、圧縮記帳額を利益処分によって積立金として計上した場合も当然監査上妥当なものとして取り扱われることはいうまでもない。なお、従来の監査委員会報告第23号では、国庫補助金、工事負担金等により取得した固定資産の圧縮記帳も、上記交換取引と一括して取り扱っていたが、本来、これらは交換取引とは異種のものであるから、本委員会報告では別扱いとした。ただし、本委員会報告「一 監査上の取扱い(注1)」にあるとおり国庫補助金、工事負担金等に相当する金額をその取得価額から控除した場合も、企業会計原則注解24で認められているので、監査上妥当なものとして取り扱う旨を注意的に記載することにした。

 

1.交換取引

法人税法第50条に定める交換及び租税特別措置法第65条に定める換地処分等で、自己所有の固定資産と交換に同一種類・同一用途の固定資産を取得したときは、前記Ⅱ1.の見解から、資産間の連続性又は同一性が認められるので、譲渡資産の帳簿価額を取得資産の取得価額とすることができるものとした。この場合の資産の連続性又は同一性を示す同一種頚、同一用途の考え方は税法の取扱いが参考になろう。

 

2.交換取引に準ずるもの

固定資産を譲渡し金銭等を取得する売買取引の場合には、売買取引から生ずる損益は、発生又は実現したものとみるのが相当である。したがって、税法上の収用等に伴う代替資産の取得のような場合は、通常、売買取引として会計処理しなければならない。しかしながら、固定資産の譲渡が収用等(租税特別措置法第64条)によって行われるのは、企業の意思に関係のない社会的要請によるものであるから、その取引の実態からみて、交換に準ずる場合があろう。例えば、収用によって、譲渡資産の譲渡代金で同一種類、同一用途の代替資産を取得したようなときは、たとえ金銭等が当該取引に介在していても、取得資産と譲渡資産との間に連続性又は同一性が認められるので、交換に準じて当該譲渡資産の帳簿価額を取得資産の取得価額とすること、換言すると譲渡益相当額を取得資産の取得価額から控除することが許される。

なお、収用等に伴う代替資産の取得のほか特定の資産の買換え(租税特別措置法第65条の7)のなかにも、上記に類するものとして取り扱うことができる場合もあろう。

また、法人税法第47条の保険差益については、国庫補助金、工事負担金等と同類のものと解した。ただし、保険金等で同一種類、同一用途の固定資産を取得した場合に限られるであろう。

 

3.圧縮損及び護渡益等の表示

上記1.の交換取引の場合は、譲渡資産の帳簿価額か直接取得資産の取得価額とされるので、損益表示の問題は生じないが、2.の交換取引に準ずる収用等に伴う代替資産の取得、特定資産の買換え等による固定資産の取得の場合は、圧縮損及び譲渡益の表示に閲する問題が生ずる。本来なら、交換取引に準ずるものとして取り扱う以上、圧縮損と譲渡益は、損益計算課上相殺表示が望ましい。しかし、税務上の取扱いとの調整がなされるまでは、両建表示しても監査上妥当なものとして取り扱うことになる。なお、国庫補助金、工事負担金等の圧縮損と受入益についても同様の問題があるので留意されたい。

 

4.未決算特別勘定の処理

収用等により資産を譲渡した事業年度又は国庫補助金、工事負担金等を受けた事業年度に圧縮対象資産を取得できなかった場合の圧縮記帳見込額は、税務上は特別勘定又は利益処分による積立金として処理されるが、上述のごとく交換取引に準ずるものや国庫補助金、工事負担金等の圧縮記帳額を取得資産の取得価額から控除する方法を採用した場合には、これらに対応して関連の未決算特別勘定等を貸借対照表負債の部に計上することにした。よって、それ以外の場合の未決算特別勘定等は、利益処分による積立金として処理することになる。なお、本委員会報告「二.経過措置2.」に述べたとおり、監査委員会報告第23号による未決算特別勘定等の会計処理については、なお従前どおりとする旨の経過措置を講じた。

 

5.圧縮記帳を行った旨及び圧縮額の注記

圧縮記帳を行った旨及び圧縮額の注記については、固定資産の圧縮記帳に関する税法の規定を適用して行う会計処理が取得原価主義の枠内で行われる限り、この記戦をする必要はないとする意見もある。しかしながら、本委員会報告では、交換により固定資産を取得する場合はともかくとして、収用等により資産を譲渡し新たに資産を取得する場合については、形の上では売買の形式がみられるので、その経緯を開示することは重要な財務情報の提供であるという立場がとられた。この注記は、当該処理が行われた事業年度の財務諸表についてのみなされれば足りると考えられている。

なお、国庫補助金、工事負担金等で取得した場合の注記については本委員会報告では触れていないが、これは当然のことながら、企業会計原則注解24が適用されるからである。

 

Ⅳ 経過措置について

 

本委員会報告の発表に伴い従来の監査委貝会報告第23号は、廃止される。ただし、改正商法は、昭和57年10月1日から施行され、会社によっては改正商法に基づく事業年度を既に迎えたところもある。したがって、このような時の経過を考慮し、本委員会報告は、昭和57年10月1日以後最初に終了する事業年度の翌事業年度から適用するよう経過措置を講じた。

 

(監査第一委員会委員長 広田 潤)

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[シリーズ] ひと言ずつ解説!会計監査六法 (2014.7.1時点)

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