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外貨建取引等の会計処理に関する実務指針 (平成23年3月29日)

解説

1.概要

外貨建取引等(意味は、外貨建て取引等会計処理基準の方を参照)の具体的な会計処理について定めています。

2.ポイント

目次を見ると、冒頭に、振当処理について、スペースが割かれていることに、気づかれるかもしれません。参考までに振当処理の背景等について付言しておきます。

外貨建取引には、為替予約を組むことが多いのですが、為替予約はデリバティブ取引に該当します。デリバティブ取引は、「決算時に為替予約を時価評価して、評価差額は当期の為替損益として処理する」のが原則です(金融商品会計基準、外貨建取引等会計処理基準)。具体的には、決算日レートで換算したうえで貸借対照表に計上され、評価替により生じた損益は為替差損益として処理します。

他方、振当処理とは、同実務指針によれば、「為替予約等により固定されたキャッシュ・フローの円貨額により外貨建金銭債権債務を換算し、直物為替相場による換算額との差額を、為替予約等の契約締結日から外貨建金銭債権債務の決済日までの期間にわたり配分する方法」とされております。これは、期末に時価評価しない処理になりますので、すぐ上で説明しました「期末時に時価評価する」というデリバティブ取引の処理とは一致していません。

では、為替予約は、デリバティブなのに、どうして、このような例外処理が認められるのでしょうか?

その理由は、振当処理よる損益インパクトの効果が、日本企業にとって望ましいという産業界の要望に応えているためです。具体的には、為替予約の評価損益と外貨建金銭債権債務から生じる評価損益とは、通常、ほぼ同水準で逆方向に発生するので、結果的に為替差損益が相殺され、為替レートの変動による損益のブレを抑えることができる効果が、支持されています。

ですので、「当面の間」と枕詞を打っていますが、以上の事情のため、積極的に廃止される兆候はありません。。。。しかし、IFRSとのコンバージェンスの局面になると、廃止になることになると思われます。

なお、外貨建取引では、ヘッジ会計を適用している会社も少なくないですが、これについては、別の、「金融商品会計に関する実務指針」の方に規定されておりますので、そちらを参照することが必須になります。

また、グループ会社で、日本の親会社では外貨建取引をしていなくても、海外子会社を連結する際には、連結決算の最初のひと手間で、在外子会社等の財務諸表の換算が必須になるので、連結財務諸表に係る会計基準等とも関連しています。

3.参照程度

他の会計基準と折に触れて、参照すべき指針です。また、実際の取引の会計処理を検討する際には、当実務指針だけで済むものは少なく、金融商品や連結等の他の実務指針などとセットで理解する必要があります(大変ですが)。

[シリーズ] ひと言ずつ解説!会計監査六法 (2014.7.1時点)

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