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消費税の会計処理について (平成元年1月18日)

解説

1.概要

消費税に係る会計処理、表示等を定めたものである。

プロジェクトチーム報告のため、強制力はないのであるが、監査・保証実務委員会実務指針第 63 号「諸税金に関する会計処理及び表示に係る監査上の取扱い」(→現在は、企業会計基準第 27 号 「法人税、住民税及び事業税等に関する会計基準」 平成 29 年 3 月 16 日 企業会計基準委員会 の26)で、消費税については、当報告を参考にするよう、明記されていることから、実質的に実務指針並の強制力を有する。

2.ポイント

内容は多岐に渡っているが、プロジェクトチーム報告であるため、丁寧に書いてあるので、消費税法が分かっていれば、読み解くのは難しくない。

平成元年の公表後、一度も改正されていない。(テーマが消費税であるため、IFRS等の海外の会計基準とは関係ないことと、それだけよくできているともいえます。)

なお、表示に関しては、ノーマルなケースは記載してあるが、追徴額の表示については触れられていない。私見では、追徴額等についてはそれがいわゆる臨時多額であれば特別損失でよいが、少額等の場合には、(法人税等追徴額とは異なり、固定資産税等の追徴額と同様に)租税公課a/cに含めて計上することになると考えます。

3.参照程度

消費税の制度や処理がいつもと変わる場合には、きちんと参照する必要があります。

 

 

 

4.付録

当委員会報告のみ、以下に原文を引用します。なお、若干の誤植等が含まれる可能性があります:

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消費税の会計処理について(中間報告)

平成元年1月18日

日本公認会計士協会 消費税の会計処理に関するプロジェクトチーム

第1.はじめに

消費税は、事業者が国内で行った課税資産の譲渡等を課税対象とする間接税である。製造及び流通等の各段階の事業者を納税義務者とするが、原則として、その税額が転嫁され、最終的には消費者がそれを負担するところの新しい税制である。
当報告は、消費税法及びその関連法令が昭和63年12月30日に公布・施行され、平成元年4月1日から適用されることに伴い、企業が採用すべき当面の「消費税の会計処理」について、当プロジェクトチームの検討結果を報告するものである。この報告の会計処理は、主に証券取引法監査及び商法監査の対象となる企業を考慮して作成したものであるが、その他の企業にも利用できるよう配慮を行った。

第2.会計処理の基本的考え方

消費税は、付加価値に課税するものであり、原則として、資産の譲渡等の都度その対価の額につき課税を行うこととし、その前段階に課された税額を控除又は還付して調整することとされている。このように仕入れ等に係る消費税(以下「仕入税」という。)は、一種の仮払金ないし売上等に係る消費税(以下「販売税」という。)から控除される一種の通過支出であり、各段階の納税義務者である企業においては、消費税の会計処理が損益計算に影響を及ぼさない方式(税抜方式)を採用することが適当である。
ただし、非課税取引が主要な部分を占める企業等当該企業が消費税の負担者となると認められる場合、簡易課税制度を採用した場合、その他企業の業種業態等から判断して合理性がある場合には、それに対応する会計処理方式(税込方式)を採用することができる。
なお、資産に係る控除対象外消費税の性格については、最終的な消費について負担したものと考え「当該資産の付随費用として取得原価を構成するもの」とみる説と控除できなくなった仮払金であるとの考え方等から「発生事業年度の期間費用」とみる説があるが、いずれがより適当であるかは、消費税法適用後の経過等を踏まえ、今後更に検討すべきものと考える。

第3、税抜方式

これは、仕入税を仮払消費税等の勘定で、販売税を仮受消費税等の勘定で処理し、課税期間に係る販売税と仕入税とを相殺し、その差額を納付し又は還付を受けるものであり、企業の損益計算に影響を及ぼさない方式である。

Ⅰ.消費税の会計処理

1.販  売  税・・・販売税は、売上、雑収入、特別利益等と区分し、仮受消費税等として処理する。
2.仕  入  税・・・仕入税は、仕入、経費、固定資産等と区分し、仮払消費税等として処理する。
3.納付すべき消費税(以下「納付税」という。)・・・販売税から控除対象消費税を控除した金額を未払計上し、費用に関係させない。
4.還付を受ける消費税(以下「還付税」という。)・・・控除対象消費税から販売税を控除した金額を未収計上し、収益に関係させない。

Ⅱ、税抜方式の仕訳例1(取引の都度行う方法)

1.取引時の処理
(1)販売税の処理
売掛金   XXX  売 上   XXX
>>>>>>>>仮受消費税 XXX
(2)仕入税の処理
(例1)
仕 入   XXX  買掛金 XXX
仮払消費税 XXX
(例2)
製造経費  XXX  未払金 XXX
諸経費   XXX
仮払消費税 XXX
(例3)
固定資産  XXX  現金預金 XXX
仮払消費税 XXX

2.半期末及び事業年度末(以下「計算期間末」という。)の処理
計算期間中の販売税と仕入税を相殺し、その差額を未払消費税又は未収消費税に振り替える。
(例1)納付税のある場合
仮受消費税 XXX  仮払消費税 XXX
>>>>>>>>>未払消費税 XXX
(例2)還付税のある場合
仮受消費税 XXX  仮払消費税 XXX
未収消費税 XXX

3.納付又は還付時の処理
(納付時)
未払消費税 XXX  現金預金 XXX
(還付時)
現金預金  XXX  未収消費税 XXX

Ⅲ.税抜方式の仕訳例2(取引時点では税込方式で会計処理し、計算期間末等に税抜方式に修正する方法)

1.販売税の処理
売 上   XXX  仮受消費税 XXX
雑収入   XXX
固定資産  XXX
売却益(損)

2.仕入税の処理
仮払消費税 XXX  仕 入 XXX
>>>>>>>>>製造経費  XXX
>>>>>>>>>諸経費   XXX
>>>>>>>>>固定資産  XXX

3.棚卸資産の評価額を修正
仕 入   XXX  棚卸資産 XXX
製造経費  XXX

4.未払消費税又は未収消費税の計上時の処理及び納付又は還付時の処理は、取引の都度行う方法の場合に同じ。

Ⅳ.資産に係る控除対象外消費税の処理

1.棚卸資産に係るもの
(1)当該棚卸資産の取得原価に算入する方法
(2)発生事業年度の期間費用とする方法

2.固定資産等に係るもの
(1)資産に計上する方法
① 当該固定資産等の取得原価に算入する方法
② 固定資産等に係るものを一括して長期前払消費税として費用配分する方法
(2)発生事業年度の期間費用とする方法

3.控除対象外消費税の仕訳例
(1)資産に計上する場合
① 個々の資産の取得原価に算入する場合
建 物   XXX   仮払消費税 XXX
機械装置  XXX
② 長期前払消費税で処理する場合
長期前払  XXX   仮払消費税 XXX
消費税
(2)期間費用とする場合
租税公課  XXX   仮払消費税 XXX
(消費税)

第4.税込方式

これは、仕入税を資産の取得原価又は費用に含め、販売税を収益に含める方式である。この方式では、納付税は租税公課勘定に、還付税は収益勘定に計上する。

Ⅰ.消費税の会計処理

1.販 売 税・・・販売税は、売上、雑収入、特別利益等に含めて計上する。
2.仕 入 税・・・仕入税は、仕入野経費、固定資産等に含めて計上する。
3.納 付 税・・・租税公課(消費税)として費用に計上する。
4.還 付 税・・・雑収入(還付消費税)として収益に計上する。

Ⅱ、税込方式の仕訳例

1.計算期間末の処理
(1)納付税は租税公課として費用に計上する。
租税公課    XXX   未払消費税 XXX
(消費税)
(2)還付税は雑収入として収益に計上する。
未収消費税   XXX   雑収入 XXX
(還付消費税)

2.納付又は還付時の処理
(納付時)
未払消費税   XXX   現金預金 XXX
(還付時)
現金預金    XXX   未収消費税 XXX

第5.財務諸表における表示

I.消費税の会計処理は、会計方針として記載するものとする。

1.税抜方式を採用している場合の記載例
(1)資産に係る控除対象外消費税がないとき
消費税の会計処理は、税抜方式によっている。
(2)資産に係る控除対象外消費税があるとき
① 資産に係る控除対象外消費税を資産の取得原価に算入することとしているとき
消費税の会計処理は、税抜方式によっている。ただし、固定資産に係る控除対象外消費税は個々の資産の取得原価に算入している。
② 資産に係る控除対象外消費税を一括して長期前払消費税に計上することとしているとき
消費税の会計処理は、税抜方式によっている。ただし、固定資産に係る控除対象外消費税は長期前払消費税に計上し、○年間で均等償却を行っている。
③ 資産に係る控除対象外消費税を発生事業年度の期間費用とすることとしているとき
消費税の会計処理は、税抜方式によっている。ただし、資産に係る控除対象外消費税は発生事業年度の期間費用としている。
(注)資産に係る控除対象外消費税の金額が重要でない場合は、上記ただし書きの記載を省略することができる。

2.税込方式を採用している場合の記載例
消費税の会計処理は、税込方式によっている。

Ⅱ.消費税関連科目の表示方法は、次のとおりとする。

1.未払消費税
未払消費税は、「未払消費税」等その内容を示す適当な名称を付した科目で貸借対照表に表示する。ただし、その金額が重要でない場合は、未払金等に含めて表示することができる。

2.未収消費税
未収消費税は、「未収消費税」等その内容を示す適当な名称を付した科目で貸借対照表に表示する。ただし、その金額が重要でない場合は、未収金等に含めて表示することができる。

3.租税公課(消費税)
税抜方式の場合における控除対象外消費税又は税込方式の場合における納付すべき消費税は、販売費及び一般管理費の「租税公課」に表示し、その金額が重要な場合は「消費税」等その内容を示す適当な名称を付した科目で表示する。
(注)販売費及び一般管理費として表示することが適当でない場合には、その金額を売上原価、営業外費用等に表示することができる。

4.雑収入(還付消費税)
税込方式の場合における還付された消費税は営業外収益の「雑収入」等に表示し、その金額が重要な場合は「還付消費税」等その内容を示す適当な名称を付した科目で表示する。
(注)営業外収益の「雑収入」等として表示することが適当でない場合には、その金額を売上原価、販売費及び一般管理費等から控除して表示することができる。

5.長期前払消費税
長期前払消費税は、「長期前払消費税」等その内容を示す適当な名称を付した科目で貸借対照表に表示する。ただし、その金額が重要でない場合は、投資その他の資産の「その他」に含めて表示することができる。

以 上

 

[シリーズ] ひと言ずつ解説!会計監査六法 (2014.7.1時点)

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